
映画『シェーン(1953)』のデータ
題名 シェーン(Shane)
監督 ジョージ・スティーヴンス
出演 アラン・ラッド、ヴァン・ヘフリン、ジーン・アーサー、エリシャ・クック・Jr
上映時間 118分
制作年 1953年
制作国 アメリカ
映画『シェーン(1953)』のあらすじ
19世紀、南北戦争が終わった西部開拓時代のワイオミング。
その開拓地に流れ者の男が通りかかる。男の名はシェーン。シェーンは開拓者スターレットから水を分けてもらう。そこへこの辺りを牛耳っているライカ―一味が現れる。ライカーは開拓者らの畑や家畜を荒らしまわり、みなを追い出そうと嫌がらせを行っていた。スターレットに加勢したシェーンはそのまま一晩やっかいになる。
スターレットの一家は、料理上手の妻マリアンと一人息子のジョーイの三人家族。ジョーイは銃の名人であるシェーンに興味津々。ジョーイに懐かれたシェーンは、トラブルを抱えるスターレットに雇われ、開拓を手伝い、さらにはライカー一味と対峙することになる。
スターレット家に世話になるうち、ジョーイはますますシェーンのことが好きになり、シェーンとマリアンはお互いに惹かれ合うようになる。
ライカー一味のあまりの横暴さに耐えかねた開拓民がとうとう音を上げ、一人また一人と土地を離れようとしはじめる。最後まで戦うことを呼び掛けるスターレットとその仲間たちは抵抗を続け、シェーンもそれに加勢する。しかしライカーは早撃ちで知られる殺し屋ウィルソンを雇い、スターレットらの命を狙っていた。
繰り返されるトラブルの末、ウィルソンと対決したシェーンは早撃ちに勝ち、ウィルソンを撃ち殺すが、自分も腹に弾を喰らっていた。
シェーンはジョーイを一人で家に帰し、スターレットやマリアンに別れも言わず、馬にまたがり荒野を後にする。
映画『シェーン(1953)』の予告編
映画『シェーン(1953)』の感想
映画『シェーン』と言えば、少年ジョーイの「シェーーーン!カンバーック!」が超絶有名な、映画史に残る大傑作の中の一本。
銃撃戦などは少なく、西部劇としてはかなり静かな作品。
息をのむほど美しいワイオミングの素晴らしいロケーション。見渡す限りの平原と森、周りを取り囲む山々。どこまでも続く青い空、白い雲。
そこに西部開拓時代の木造家屋がぽつぽつと建ち、西部劇でよく見るスイング扉の酒場、店が数件だけしかない町。素朴な人々。
そこに、いかにも過去がありそうな男がやってくる。そのシェーンと、シェーンを受け入れる男スターレットが、野良作業や喧嘩を通して固い絆で結ばれていく様が見ていて気持ちがいい。
シェーンのことが大好きで、毎日シェーンのことばかり考えている少年ジョーイもいい。父スターレットも十分男らしくて、腕っぷしも強いし、バイタリティがあって、妻も息子も心から大切にしているいい男だけれど、こういう流れ者みたいな秘密のある男に憧れる子供心というのも良く分かる(ハンサムだし)。
心から憧れ、お手本になるヒーローが身近に二人もいて、私はうらやましく思う。
そして密やかに思いあうシェーンとスターレットの妻マリアン。これが本当に控えめな描かれ方で好感。
考えてみれば、世話になった男の妻と密やかとはいえ惹かれあってるんだから穏やかな話じゃない。でもその関係は、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のフランクとコーラみたいなのじゃないよ。本当に控えめなの。
二人の想いをズバリとは描かず、気持ちが微かに香ってくるという感じで、大人な描かれ方。すばらしい演出だと思う。
そしてたぶんスターレットだってその事に気が付いているんだろうに、特になんの手も打たない。相当愛している妻が、他の男にプラトニックな気持ちを抱いていたら、平常心じゃいられないだろうに、スターレットは自分の感情をおくびにも出さない。
信頼なのかな。妻マリアンに対しての信頼はもちろん、シェーンに対しての信頼もあると思う。
ラストの方で、命をかける覚悟をしたスターレットはマリアンに向かって遠回しに、自分の死後はシェーンと生きるよう促す発言をしていた。
漢だなあ。愛する妻を守り、でも自分が力尽きた時には信頼している男と生きるよう、あらかじめ許しておく。
私はシェーンよりもスターレットの方が好きだな。包容力があって、全力で信頼できるもん。
他にも、エリシャ・クック・Jrが演じたトーリーも面白い魅力がある。
小男で、決して腕っぷしなんか強いはずはないのだけれど、それでも精一杯突っ張って虚勢を張って、自分の正義を曲げず貫いた意思は立派。本当に小男だから、その姿には滑稽さも漂う悲哀があって、応援したくなる。
それから、悪役のライカー。開拓民として政府に許された権利を守ろうとするスターレットらの心意気に感動するのは当然だけれど、このライカーだってただの悪党じゃない。
非道な男だけれど、彼にも言い分がある。それを聞けばライカーの味方をしたくなる。
やり方は間違っているけれど、彼の理屈にも十分説得力があるし、私だって同じ立場だったら同じように感じ、同じ主張をするだろうと思う。
とはいえ深く思いを巡らせば、アメリカ人の場合はネイティブアメリカンから奪った土地を、自分もまた奪われようとしているだけなので、因果応報でしかないが。
最後に、この映画の主役はシェーンで、演じたのはアラン・ラッドなのだけれど、このシェーンの佇まいが実にいい。登場してから去っていくまで、身をわきまえた控えめな存在感で、すばらしく美しい。
シェーンは主役だからといってグイグイ前に出てきたりしない。誰が主役なのか分からないくらい控えめで、喧嘩になるとき以外はいつも静かに見守っている。トーリーが死んで仲間が集まり葬式をしている時も、自分はよそ者だからか、傍で静かにたたずんでいるだけ。
馬にまたがり登場し、馬にまたがり去っていく姿の格好良さといったらない。顔がはっきり映らないところもなんともニクイ。このオープニングとエンディングは、小柄と言われたアラン・ラッドの小柄さが目立たなくて、実に絵になる名シーンになっている。
この作品が彼の代表作で良かったと思う。アラン・ラッドは小柄で悩み、晩年は割と不幸な人生だったイメージがあるけれど、この作品があれば彼は永遠になれる。
もう一度、今度は襟を正して、正座して(心の中で)視聴したいと思う、そんな風に心に残る傑作なのだった。
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