題名 拳銃貸します(This Gun for Hire)
監督 フランク・タトル
原作 グレアム・グリーン 「拳銃売ります」(1936)
出演 ヴェロニカ・レイク、ロバート・プレストン、アラン・ラッド
上映時間 80分
制作年 1942年
制作国 アメリカ
アラン・ラッド、ヴェロニカ・レイクのコンビ第一作。とはいえ、最初からコンビの企画ではなくて、二人の評判が良かったので次回作からコンビを組むことになった、という感じらしい。
舞台は戦前のサンフランシスコ。殺し屋のレイブンはニトロ化学薬品会社のゲイツに雇われ、会社を強請る男ベイカーを射殺する。その報酬として10ドル札を受け取るが、その10ドル札はゲイツが会社から盗まれた金として警察に届け、ナンバーを控えられている札だった。そうとは知らずに洋品店で使用したレイブンは、ゲイツの会社を襲った強盗犯として追われる羽目になる。嵌められたと知ったレイブンはゲイツに復讐を誓う。
一方、一連の事件を担当する刑事マイケルを恋人に持つ、歌手でマジシャンのエレンはゲイツにスカウトされ、ゲイツの経営するナイトクラブで働くことになる。エレンとゲイツを引き合わせた男は、エレンを上院議員とも引き合わせる。エレンはそこでゲイツをスパイするよう頼まれ、ロサンゼルスへ行くことになる。
レイブンはゲイツを追ってロサンゼルス行きの列車に乗り、たまたまエレンの隣の席に座ったことで、自分が警察に追われる身であると知られてしまう。そして二人が一緒にいるところをゲイツに見られ、エレンまでが命を狙われることになる。
話や相関関係が若干込み入っていたので、頑張ってあらすじしてみた。
犯人は誰だ的な作品ではないので別にネタバレではないと思うけど、黒幕はニトロ化学薬品会社の死にかけた社長ブルースター。
彼は毒ガスを日本に売り、それを中国と戦争中の日本が使用すればアメリカが参戦するだろう、そうすれば会社は莫大な利益を上げることができる、というわけで戦争を焚きつけて一儲けしようと企んでいる御仁。その化学式をベイカーが手に入れて、会社を強請るという流れっぽい。
ありそう。ていうか今まさにウ国とかで西側諸国の支配者層がやってそう。ついでにそれに乗っかって、日本も尻尾振っておこぼれにあずかろうとしてそう。
ベイカーは上院議員宛ての封筒に入った化学式を手に入れて、それをネタにニトロを強請ろうとしていたみたいなので、そもそも誰かが戦争犯罪を議員に告発しようとしていたものをベイカーが横取りしたと考えればいいのかな?その辺ちょっと良く分からなかった。
映画のクレジットを見るに、序列は①ヴェロニカ・レイク ②その恋人で刑事のロバート・プレストンときて、まだまだ新人のアラン・ラッドは4番目だから、そもそもはロバート・プレストンとヴェロニカ・レイクの映画だったのに、アラン・ラッドが喰っちゃったのかな。
実際このアラン・ラッドが演じた殺し屋フィリップのキャラクターが、ベタだけどなかなかいい。
ターゲットは愚か、同席していた女までも眉一つ動かさずに射殺する非情な男として出てくるけど、端々に「ほんとはイイやつなんだろうな」という、ちょっとした描写をさしはさんでくる。
まず泊っている安宿に住み着く猫にミルクを上げていて、その猫を邪険にしたメイドをドツキ倒してひっぱたき、服を破っておきながら、金が手に入るとその服を弁償しようと洋服屋さんで女物の服を買い、そこで使ったドル札から刑事に終われる羽目になる。
殺しの現場に偶然居合わせた足の悪い女の子のことも、一瞬「やっちまおうかな」と思ってやっぱりやめ、転がったボールを取ってあげたりなんかして。
ベタでしょう。でもさりげなく描かれているからクサくはない。
後半で自分の生い立ちを語る表情も良かった。日本人の俳優とかだったら泣いたり大声出したり机に突っ伏したり、オオゲサにやりかねないところだけど、ラッドは薄っすら涙を浮かべた目で空を見つめ、淡々と喋るだけ。幼い昔のことを思い出して、その記憶の中に集中している感じで、語る相手のヴェロニカ・レイクを説得しようとか同情してもらおうとかいう邪心が感じられない。いい表情だった。
ヴェロニカ・レイクも渋い歌声を披露しててなかなか。知的な声がいい。
とはいえ、手品をしながら歌うというスタイルだから、気が散っちゃって歌に集中できなかったよ。それって歌手として得策なんでしょうか。
ともあれこの二人は小柄コンビで収まり具合もいいし、このコンビで次回作を撮ろうとなるのは頷ける作品だったね。