ぱっとみ映画感想ブログ

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バニー・レークは行方不明(1965)

 

 

 

 

 

映画『バニー・レークは行方不明』のデータ

題名 バニー・レークは行方不明(Bunny Lake Is Missing)
監督 オットー・プレミンジャー
原作 イヴリン・パイパー「バニー・レークは行方不明」(1957)
出演 キャロル・リンレー、キア・デュリア、ノエル・カワード、ローレンス・オリヴィエ
上映時間 107分
制作年 1965年
制作国 イギリス

タイトル・デザイン ソール・バス

 

 

映画『バニー・レークは行方不明』のあらすじ

アメリカから若き女性とその娘が英国に引っ越してくる。アパートに到着した彼女は、すぐに娘のバニーを幼稚園へ送り届け、自分は家に戻って引っ越しの片付けの続きをする。昼過ぎ、幼稚園へ迎えに行くがバニーが見当たらない。先生に聞いても誰に聞いても、バニーを見た人は誰もいない。警察は徐々にバニーの存在自体を疑い始める。

バニーはどこへいったのか、バニーは本当に実在するのか、母親の頭はまともなのか。

 

 

映画『バニー・レークは行方不明』の感想

英国らしい、空気が澄んだ映像と清潔感あふれるセットや街並み、ファッションなど、終始お洒落な感じで本編もやはりスタイリッシュ。60年代の英国映画のモッズ的なおしゃれ感があふれてる。

タイトル・デザインはソール・バス。今作もさすがのオープニングで素晴らしかった。真っ黒い画面で始まって、男性の手が伸びてきて画面を破るとクレジットが現れる仕組み。やはりこちらもスタイリッシュ。タイトル・バックとかオープニング・クレジットがいいと俄然期待が高まる。ほんと天才。

 

そして主人公の兄役がキア・デュリアだった。ボーマン船長じゃん。『2001年宇宙の旅(1968)』のボーマン船長。

今回はすごく若くて「青年」という感じ。実際この時20代後半で、さわやか優等生、チャーミングでなかなかのハンサム。一方、ボーマン船長は寡黙でクールな中年のイメージ。

だからさぞかし年月が経っているのかと思いきや、わずか3年後。まるで信じられない。10年くらいは経っていそうな、そんな印象。

まあ、ボーマン船長は最後のしわくちゃ爺さんの印象も強いし、寡黙で内向的な役だったから、それが大人に見えた所以かも。

 

話は変わって、この映画の一番の肝は娘のバニーが画面に登場しないところにある。

バニーの存在は母親の発言の中でのみ語られる。ぬいぐるみが出てきたり、歯ブラシも2つあったりなんかはしているのだが、本人が出てこない。

英国に着いてからバニーを「見た」人が誰もいない。バニーがいると言っているのは主人公だけなのだった。

 

バニーが登場しないのだから、私たち観客もバニーを見ていない。だから私たちも母親を疑う。「本当にバニーはいるの? 彼女の妄想なんじゃないかしら」

母親だけが、孤独に娘の存在を主張し続ける。

 

私がこの母親の立場だったらそのうち気が狂うかも。実存が疑われ、証明するすべがない中で「いる」ことを証明する困難さ。哲学的な恐怖。

私が今まで出会ってきた人が、ある日突然私のことを知らないと言い出したらどうしよう。職場に行ったら私のロッカーも机もなくなっていて、誰も私を知らないと言う。

その時私は、私がいることを証明できるだろうか。

強く自分を信じたいところだけれど、もしかすると私は自分で自分の存在を疑ってしまうかもしれない。

そういう風に、恐ろしくなる映画なのだった。

 

 

バニー・レイクは行方不明 (字幕版)

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