ぱっとみ映画感想ブログ

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バルカン超特急(1938)

 

 

 

 

 

映画『バルカン超特急』のデータ

題名 バルカン超特急 (The Lady Vanishes)
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレイヴ、ポール・ルーカス、メイ・ウィッティ、ノウントン・ウェイン、ベイジル・ラドフォード
上映時間 98分
制作年 1938年
制作国 イギリス

 

 

映画『バルカン超特急』のあらすじ

走る列車という一種の密室で老婦人が失踪したにも関わらず、誰もが口裏を合わせたかのように「そんな女性はいなかった」と証言する。

しかしたったひとり、老婦人の存在を確信しているアイリスが彼女の存在を主張し続け、アイリスは正気まで疑われてしまう、という話。

 

 

映画『バルカン超特急』の感想

あきらかに『バニーレークは行方不明(1965)』や『フライトプラン(2005)』に影響を与えていると思われる作品で、かつ水野晴郎のあの迷作『シベリア超特急(1996)』の元ネタでもある。

 

ただし『バニーレークは行方不明』の方は問題のバニーが登場せず、観客すらもバニーの存在を疑うように仕向けられているため、唯一バニーの存在を主張する母親の正気も疑われるが、

こちらの『バルカン超特急』は、問題になる老婦人は最初から登場してくるので、観客は老婦人の存在を疑うことはない。なのでアイリスの正気を疑う観客もいない。

その結果『バニー~』の方がシリアスに哲学できる作品で、『バルカン~』の方はライトでコミカルな作風で気楽に楽しめる。

 

ちなみに老婦人フロイ役は『ガス燈(1944)』でちょっとだけ出てくる、主人公の近所に住む詮索好きな老婦人を演じていたメイ・ウィッティだったことを記録しておく。

 

 

チャータースとカルディコットについて

ヒッチコックならではのサスペンスやユーモアもさることながら、面白いのがその構成で、

映画の主役は、失踪する老婦人フロイ、彼女を探すアイリスとギルバートの三人であることは明らかなのに、最初から最後まで一貫してスポットがあたっているのが、ただただ偶然居合わせただけの脇役でしかない英国男性チャータースとカルディコットの二人組というところ。

すっとぼけた味わいを披露しつつ、最後の方は大活躍して見せ場も作るし、このふたりを見るだけでも楽しい。

ホテルの部屋が取れずメイド部屋をあてがわれ、そのメイドが帽子を取りに出たり入ったり、しまいには着替え始めたりして、どぎまぎしているふたりの妙に真面目な顔がじわじわくる。それもひとつしかない小さなベッドに二人並んで横になって、新聞読んでたりなんかしてるの。でもホモっぽくは全然ない。

私はひげでパイプのチャータースが好きだった。ヒトラーの『わが闘争』を小脇に抱えたりしてて、ピストルで手を撃たれても表情一つ変えずに淡々としているところが頼もしかった。

 

実はベイジル・ラドフォードとノウントン・ウェインが演じた、チャータースとカルディコットはこの作品で人気をとり、他の映画でもチャータースとカルディコットとしてたくさん登場している。

私は二人が好きになって、『ミュンヘンへの夜行列車(1940)』『夢の中の恐怖(1945)』『四重奏(1948)』を見てるけど、やはりこの『バルカン超特急』がこのコンビの最高傑作だと思う。

 

 

(字幕版)バルカン超特急

(字幕版)バルカン超特急

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