ぱっとみ映画感想ブログ

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オペラ座の怪人(1962)

 

 

 

 

 

映画『オペラ座の怪人(1962)』のデータ

題名 オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)
監督 テレンス・フィッシャー
原作 ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」(1909年)
出演 ハーバート・ロム、マイケル・ガフ、ヘザー・シアーズ、エドワード・デ・スーザ
上映時間 84分
制作年 1962年
制作会社 ハマー・フィルム・プロダクション
制作国 イギリス

 

 

映画『オペラ座の怪人(1962)』のあらすじ

ピートリー教授は売れない音楽家で、10年かけて作曲した楽譜をダーシー卿に売り込みに行くが、ダーシー卿はその楽譜を盗み自分の名で印刷を開始する。楽譜が盗まれたことを知ったピートリーはダーシー卿に詰め寄るが手ひどく追い払われる。激高したピートリーは印刷所へ入り込み、楽譜を破り火で焼こうとするが、誤って硝酸を浴びて大やけどを負ってしまう。たまらずピートリーは川へ飛び込み、そのままオペラ座の地下へ流れ着き、助けてくれたせむし男と共に、ダーシー卿の名で上演される自分のオペラ「ジャンヌ・ダルクの悲劇」の上演を妨げはじめる。

 

 

映画『オペラ座の怪人(1962)』の感想

なんなのー、いきなりー。スケキヨかと思ったー。こわーい。

 

というわけで、見終わった感想を一言で言えば、「12チャンネルの昼間に見るとしっくりくるな」という感じ。深夜放送とかではなく、12チャンの昼間。

※12チャンネル=テレ東のことです。

 

そして改変がすごい。ひとつ前の1943年版も「ファントム(エリック)がクリスティーンのお父さんになっている」というなかなかの改変ぶりだったが、今回は更に輪をかけている。

まずはなんとエリックではなくピートリー教授という名前で登場。しかもファントムとは全く呼ばれていなかった。

しかもクリスティーンに恋をしたり、憧れるということはまるでない。ただの個人的な復讐の鬼。自分の楽譜を盗まれた恨みと、その楽譜を自分の名前で世に出すことだけを考えているというキャラクター。クリスティーンなぞ自分のオペラを成功させるための手段のひとつにすぎない、という感じ。

 

結構エキセントリックで、終盤いよいよクリスティーンの歌のレッスンを開始すると、上手く歌えないクリスティーンを手の甲で往復ビンタするわ、気絶させるわ、水をかけて起こすわ(しかも汚染水)、なかなかのスパルタ。

自分の楽曲が世間に認められるかどうかがクリスティーンにかかっているとはいえ、あまりにもやりすぎ。最後はクリスティーンの将来に期待するような発言や行動があって、愛情も“わずかに”感じられたけど、帳消しにするほどではない。

 

本来のファントムは、母親にも愛されないほど醜く生まれて、その顔を隠すために仮面をつけている。その反面、彼は音楽的才能にあふれ、美しい声を持ち、情熱的な愛と頼りがいもある、本来なら二枚目な男だ。

それなのに顔を合わせた途端、女性から全力で拒否されてしまう男でもある。原作だと「ママにもキスされたことがない」って言っていた(涙)。かわいそうなファントム。

そんなファントムがクリスティーンに恋をしてしまう。でもあまりの自分の醜さに、普通の男として彼女の前に登場できないから、どうしても仮面が必要だったというキャラクター。

 

でも今回のピートリーは、クリスティーンに全然恋してないんだから好かれなくったっていいんだし、顔の傷は自分の不注意でヤケドしただけだし、おまけに「ずっと地下から出ないだろう」って自分でも言っていた。

・・・じゃあ仮面いらなくないすか?

私には仮面をつけている必然性が感じられなかった。

 

他にも定番との違いはいくつもあって、ピートリーの仮面をクリスティーンが剥ぐのかな? 剥ぎそうだな、と思いきや、剥いでいたのはダーシー卿だったり。え?みたいな。

シャンデリアも落ちることは落ちるけど、あんまりゴージャスじゃないシャンデリアで、シャンデリアというより大きな鉄のロウソク台(燭台)といった武骨なやつだったり、

落とすのもピートリーが落としたわけではなく、せむし男が天井から落ちそうになって捕まった結果落ちただけ。

 

そんな中、「おや!」とテンションが上がったのは、その落ちるシャンデリアの真下にいたのがクリスティーンで、クリスティーン危うし!!となったピートリーが、いきなり的に仮面を「ガバア!」と剥いで火傷だらけの顔をさらし、たぶん5番ボックスなのだろう席から舞台めがけて空中を飛んでクリスティーンを守りに行っていたこと。

 

こ、これは!!

 

これにはまいった。なぜそこで仮面をとる(笑) そしてヒゲ!ヒゲ!

仮面「ガバア!」からの、傷だらけの顔が「ババアアアン」とアップ!からのジャーーーンプ! みたいな演出が昔の大映ドラマみたいだった。おもしろかったなー。

 

ま、要するに終始B級感が否めない作品で、そこがすごく面白い。

でも最も「ああB級だなあ」と思わされたのはクリスティーン役の女優。彼女が最も12チャンネルの昼間感があった。なんかあんまりロマンチックなお顔立ちじゃなかった。

 

あと、せむし男が2人も殺しているけれど、なぜ殺したのかが全然分からなかった。ピートリーは、「やつは時々手が付けられなくなる」って言っていたけど、それだけで片づけるのはどうかと思うのだが・・・。「やつは口がきけないから永遠に謎のままだろう」って・・・おい。

 

という具合に、この映画は突っ込みどころ満載で見ごたえのある、超絶面白展開。見る価値は間違いなくある。

しかし『オペラ座の怪人』シリーズはすごいと思う(シリーズではないけれど)。どれを見ても、どう転んでも面白い。見どころしかないという奇跡に立ち会える。