
映画『バートルビー(1969)』のデータ
題名 バートルビー (Bartleby)
監督 ラリー・ユースト
原作 ハーマン・メルヴィル「書記バートルビー」(1983年)
出演 ジェームズ・ウェスターフィールド、パトリック・キャンベル
上映時間 28分
制作年 1969年
制作国 イギリス
制作会社 ブリタニカ百科事典教育協会
映画『バートルビー(1969)』のあらすじ
NYウォール街の弁護士が、自分の事務所に新しく書記を雇うことにする。痩せて青白い顔をした、バートルビーと名乗る青年を雇い、自分の仕事部屋の一角で仕事をさせる。
バートルビーは最初こそ猛烈に仕事をこなすが、書記以外の仕事を全くしようとしない。何かを頼んでも「私はそれをしないほうがいいと思います」と言って自分の机に戻り、書記以外のことは一切行わない。それだけでなく食事も生姜クッキーを2,3枚食べるくらいで、何に対しても興味を示さない。
弁護士はそれでもバートルビーを雇い続けるが、そのうちバートルビーは書記の仕事もしなくなり、毎日壁に向かって立ち続け、窓から見えるレンガの壁を見つめ続けるだけになる。
理由が分からず困惑する弁護士は、何とかコミュニケーションを取ろうとするが、バートルビーは「私はしない方がいいと思います」しか言わず、手を打てない。
次第に仕事に支障がきたすようになり、弁護士はとうとうバートルビーを追い出そうとするがそれも上手くいかず、自分の方が事務所を引っ越していく。
バートルビーはその後も同じ場所にとどまり続け、出て行ったはずの弁護士もバートルビーと縁を切れない。やがてバートルビーは刑務所に入れられ、食事もせずに壁に向かって立ち続け、次に弁護士が訪ねて行ったときには床の上で死んでいた。
映画『バートルビー(1969)』の解説と感想
メルヴィルの短編小説「書記バートルビー」の初映像化作品らしい。映画と言っても30分ほどしかなく、製作会社がブリタニカ百科事典教育協会ということなので、普通の映画作品として制作上映されたものではなく、教育映画として制作されたのだろうと思う。
わたしは最近小説を読んで、その難解さに途方に暮れた。ストーリーはぜんぜん難しくないのに、バートルビーが難解過ぎる。語り部の弁護士も言っているが、バートルビーのことは誰にも何も分からないので、彼が何を考え行動しているのか、なぜ「それをしない方がいい」のか、なぜ無気力に死んでしまったのか、何も分からず全く理解できないところがこの作品の肝。
そうしたら何度も映画化されているらしいと知り、映画を見ればなにかヒントを得られるかもしれないと思ったが、日本語版DVDが手に入らない。
すると海外映画ニキがYouTubeでアップしてくれていたので視聴してみた。
もちろん私は英語が全く分からないので、サイレント映画を見るつもりで見た。
見ると徹底的に原作に忠実に映像化した作品という印象。英語が分からなくても原作を読んでいれば分からないところが何もないくらい、忠実に映画化している。
その再現度は、例えば弁護士がバートルビーが住み着いている自分の事務所へ行き、ドアマットの下に隠してある鍵を拾おうとしゃがんだときに、膝をドアにぶつけて音を立ててしまう場面が原作にあるが、それもきちんと映像化している、といった具合。
英語が分からないので想像でしかないが、セリフも一字一句原作通りに喋っているのではないかしら。
ただ一点、原作と決定的に違うのがラストの部分。小説では、バートルビーに関しての噂として弁護士が語る、バートルビーの過去がまるまるカットされている。
原作では最後に、どうやらバートルビーは「デッド・レター(配達不能郵便)」の仕分けをしていたらしいと、彼の過去が語られる。これは行先不明の郵便物を破棄する前に中身を確認し、仕分ける作業らしい。
とはいえその前職を知ったからと言ってバートルビーが理解できるかといえば、理解できない。「なるほど、そういう過去があったからなのか!道理で、、、」みたいな爽快感や納得感はゼロ。
なので映画でラストをまるまるカットしたのはありだと思う。だってどうせよくわかんないんだし。
登場人物の再現度も高い。
小説の ”私” にあたる弁護士をやったのがジェームズ・ウェスターフィールドという俳優で、初老でちょっと太っていて結構イメージに合っていた。
でも小説版ではもう少しユーモラスというか、バートルビーのような迷惑男を抱え込んで困ってしまう割には割と呑気で、いつまでも穏健に見守ってしまう甘さがある男。野望を持たず出世も望まず、現状維持でちょぼちょぼでいいや、みたいな。
でも映画ではもっと仕事が出来そうな、厳しそうな面持ちをしていた。
バートルビーに関しては私のイメージにぴったりだった。「これしかない!」みたいな。青白くて神経質そうで、コミュ障で生命力がなくて、印象にも残らず次第に消えてなくなってしまうそうな感じ。
総じて再現度の高い作品だった。驚きや発見はないけれど、小説のイメージを損なわない作品。これはこれでいいと思う。
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