ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

メトロポリス(1927)

 

 

題名 メトロポリス (Metropolis)
監督 フリッツ・ラング
脚本 テア・フォン・ハルボウ
出演 ブリギッテ・ヘルム、アルフレート・アーベル、グスタフ・フレーリッヒ、ルドルフ・クライン
上映時間 119分
制作年 1927年
制作会社 ウーファ
制作国 ドイツ

 

 

舞台は架空の未来都市メトロポリス。地上では支配者階級が豊かな生活を営み、それ以外の人間は地下に住んで奴隷のように働いている。

メトロポリスの支配者フレダーゼンの息子フレダーは、ある日労働者階級の美しい娘マリアと出会い、生まれて初めて労働者の存在を意識する。好奇心から地下に行き、奴隷同然の労働者たちの姿を見て衝撃を受けるフレダー。目の前で激務に倒れた労働者に代わって作業についたフレダーは、その過酷さを身をもって知る。

娘マリアは地下墓地で集会を開き、みなに希望を与える演説を行い、大衆の心をつかんでいた。「上の”頭脳”と下の”手”を繋ぐものが現れなければいけません。その二つを繋ぐのは”心”。繋ぐ者は必ず現れます」 フレダーはその演説を聞いて深い感銘を受ける。

一方、マッドな発明家ロートバング博士は、アンドロイドを発明して労働者を一掃しようとしていた。フレダーゼンは、労働者のアイドルであるマリアそっくりのアンドロイドを博士に作らせ、労働者を操ろうと企む。本物のマリアはさらわれ、アンドロイド・マリアが彼女に取って代わる。

アンドロイド・マリアは「いくら待っても繋ぐ者は現れない。これ以上は待てない。上のものを倒そう」と大衆を煽り、扇動された労働者たちは暴動を起こす。フレダーはマリアが本物のマリアではないと見抜くが、大衆は支配者の息子であるフレダーを追いやってしまう。

大衆は暴動を起こすが、工場長だけはストライキが意味するところを理解していた。機械が止まれば地下の町は水浸しになり、家にいる妻や子供たちがおぼれ死んでしまう。工場長は暴動をやめさせようと努力するが、興奮した大衆は聞く耳を持たず、地下の町は水没する。

大衆もようやく自分たちの愚かさを悟り、この大惨事を引き起こしたのはアンドロイド・マリアが扇動したからだと糾弾する。アンドロイド・マリアをとらえ、魔女として火あぶりにかけると、マリアの姿かたちがアンドロイドの姿に変わる。大衆はマリアが偽物であったことを知る。

地下ではフレダーが子供たちを救おうと奮闘していた。そこへ監禁場所から逃げ出したマリアが合流し、ともに子供たちを地上へと導く。マリアは自分が予言していた支配階級と労働者階級を繋ぐ架け橋がフレダーであると悟る。

フレダーはロートバンク博士と対決し、労働者代表の工場長と支配者フレダーセンが、フレダーの仲介により握手をし映画は終わる。

 

 

近未来ディストピアSFの代表作であり、名匠フリッツ・ラング監督の代表作でもある。『スター・ウォーズ』のC-3POのデザインは、今作のアンドロイド・マリアをリスペクトしたものだというのはつとに有名。

 

久しぶりに見直したけど、やはりすばらしかった。テーマもストーリーも美術も演出も、アンドロイドの造形も。示唆に富んでいて、今の私達の話でもあると思った。

 

この映画は極めて全体主義的で、地下労働者は全員同じ黒づくめの服を着て、生き物の感じが全くしない。うつむいて地面を見つめ、肩をがっくりと落とし、刑務所のように整然と並び、機械のように同じ動きをし、単純作業をこなし、それが毎日永遠に続く。

そしてその仕事というのが、ただボタンを押しているだけだったり、大きな時計の針を光るところに合わせているだけだったりと、なんだかよくわからない作業なのは現代社会のカリカチュアだと思う。

100年経った今だって勤め人の仕事なんてかなり抽象的だし、分業が進んでいるせいもあって、そこだけを見れば何をしているのか分からない。はたから見たらただ座って、キーボード叩いてるだけ、モニター見つめてるだけ、みたいな。そんな人も多いんじゃないかな。

っていうか私はそう。わたし毎日なにしてんすかね、と。何を生み出してるんですかね、と。

 

 

ラング監督、あなたの描いた不安が、より強化されて現実になろうとしています。

 

あなたの描いたロートバング博士。物凄くヤバイ目をして、顔がやたらとマッドでしたけど、彼がやろうとしていることは、今の私達からすればもうマッドでもなんでもありません。

 

アンドロイドが人間から労働を奪うなんて、こっちはもう始まってます。「インターネット便利、楽しい、バンザーイ」って遊んでいるうちに、気がついたらAIが我々を脅かしてた。

 

AIだけじゃありません。なんだか知らないけど、ムーンショットだの、ベーシックインカムだのと、私たちから労働を奪ってベッドに寝かせておこうとしている疑惑もある。『マトリックス(1999)』の世界が目前です。

 

それなのに、それを実現していく偉い人達を「マッド(狂人)」だなんていう人は誰もいません。もうニュートラルにマッドなんだと思います。

 

現実の方がずっとマッド。資本主義というのは恐ろしい。人の命や尊厳よりも、目の前の利益が簡単に優先されてしまう。

 

そしてそれが実現した暁に想定されるインパクトは産業革命時の比じゃなさそうなのに、それが分かっていても過去に戻る気は誰にもないし、もう行くとこまで行くしかなくて、世界はもうヤケクソです。

 

・・・上と下を繋ぐ者、映画でいうところのフレダーやマリアのような救世主を待ってみたいと思うけど、それが誰なのかは分からないし、実際現れるかもわからない。現れるにしても、私が生きている間にまに合うか分からない。

現れるとしても、私は下層階級からは現れないだろうと思う。フリッツ・ラングの言うように、上流階級側の人間から現れる気がする。

学も教養も金も力も持ち、そして心と使命感を持った人間でないと、世の中は変えられないと思う。持てる者が手放すこと、これが肝心。

出てくるかなあ、この現代に。

 

 

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