題名 スーパーマンⅣ 最強の敵(Superman IV: The Quest for Peace)
監督 シドニー・J・フューリー
出演 クリストファー・リーヴ、マーゴット・キダー、ジーン・ハックマン、マーク・ピロー
音楽 ジョン・ウィリアムズ(テーマ曲)
上映時間 93分
制作年 1987年
制作会社 キャノン・フィルムズ
制作国 アメリカ
どした、制作陣。
映画が始まってすぐ、スーパーマンがこっちに向かって飛んでくるシーンで早くも「ありゃ?」と思うこと請け合い。なんかバカに特撮がしょぼくなってるような・・・光の当たり具合が不自然で偽物臭く見えるタイプのしょぼさ。
背景が「背景でーす! 別々に撮影してマース!」って叫んでた。
どーしたの。Ⅰ~Ⅲまでは飛行中のスーパーマンの姿も、飛び立ったり着地したりする姿も自然だし、クリストファー・リーヴのスタイルの良さもあって、美しくて感動的でさえあったのに。
まず光の当たり方がおかしい。
一体何事かと思ったら、制作会社がB級感あふれる低予算映画ばかりを作る「キャノン・フィルムズ」に変更になっていた。
私はアクション映画をあまり見ないので「キャノン・フィルムズ」の映画は縁がなくて詳しくないのだが、それでもチャック・ノリスは知ってる。スターだったもん。超有名。一本も見たことないけど。
その後抱えたスターがジャン=クロード・ヴァン・ダムとかドルフ・ラングレンだから、「なるほどな」っていう感じでしょ。わかるわかる。一本も見たことないけど。
そして本作にかけた予算は1700万ドルだったらしいのだが、パートⅠが5500万ドル、パートⅡも5400万ドル、パートⅢで3900万ドルらしいから、いくらなんでも急落すぎる。さすが低予算会社。
そしてその弊害がスーパーマンの大事な飛行シーンにモロに反映されてた。クリストファー・リーヴの肉体美をもってしても、いかんともしがたいクオリティ。
おまけにコストカットの為なのかなんだか知らないが、ラストの飛行シーンだけはなんとⅠ~Ⅲまでの飛行シーンが使われてた。だからラストだけいきなり美しくて変。
でも映画自体は結構面白い。レックス・ルーサーも復活してるし。
まず、レックスが作り出したニュークリアマンがとても気に入った。基本的にはスーパーマンよりもずっと強いんだけど、驚くほど間が抜けていて、「さすがレックス」と嬉しくなった。
だって太陽エネルギーを使ってパワーを生み出すから、太陽が出ていないとぜんぜん力が出ない体たらく。それもちょっと日陰に入ったくらいで「しゅるるるる・・・」と力が抜けてしゃがみこむ始末。しゃがむというよりは「しおれる」という表現の方がいいかもしれない。
一秒も充電できないの。日陰に入っちゃ”しゅるるる”と萎んでしゃがみ込み、室内に入っちゃあ ”ひょろろろろろ”としゃがみ込む。
それに武器が長ーく伸びた爪なんだけど、これが超強力で、ちょっと引っかかれただけのスーパーマンが死にかけるほど。
この爪が長いところがなんともオカマっぽい。金髪のロン毛でマッチョなんだけど、80年代のビジュアル系ロック・シンガーみたいにやや化粧っ気があるからか、爪が長いだけで途端にオカマ。強いオカマ。
そして特撮や衣装が、「やや!フラッシュ・ゴードンかな!」と見まごうほどで、例の ”ちゃっちい特撮” との相乗効果でかなり面白いことになっている。
キャノン・フィルムズが『フラッシュ・ゴードン(1980)』をリスペクトしてるのかと思いました(してるのかもしれないけど)。
さすがレックス、期待に応える男。痒いところに手がとどかない、おおざっぱで素晴らしい仕事だった。
とまあ、私的には絶賛の映画ではあったが、興行成績は結局コケて、評価も悪かったっぽい。
なんと言っても、2006年のブランドン・ラウス版が作られる時にパートⅢとこのパートⅣはなかったことにされちゃって、「パートⅡの続き」という驚くべき設定にされてしまったことからも評価されなかったことがうかがえる。
でも個人的にはパートⅢもパートⅣも、そう悪くなかったと思うけど・・・
パートⅢは以前記事にも書いたけど、スーパーマンがやさぐれちゃってかなり苦悩する人間的な姿が見られたし、今作は特撮が驚くほど安っぽいけど「そこが味」と割り切れば十分楽しめると思う。
最近の2000年代に入ってからのスーパーマン・シリーズは、憎っくきデジタル映像&CGのせいでやけに格好良いちゃんとした映画になっちゃってて、今後はもうこの時代の味わい深いスーパーマンは見られそうもない。
私はクリストファー・リーヴ版の、コミカルな部分が増幅された感じは悪くないと思うんだけどね。