ぱっとみ映画感想ブログ

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月のキャットウーマン(1953)

 

 

題名 月のキャットウーマン(Cat-Women of the Moon )
監督 アーサー・ヒルトン
出演 ソニー・タフツ、ヴィクター・ジョリー、マリー・ウィンザー
上映時間 64分
制作年 1953年
制作国 アメリカ

 

 

本作に科学を求めてはいけません。飛行中の無重力描写なし、着陸地点も決めずに飛んでいるし、月で石油を掘る気でいたり、ガーゼみたいな布の作業服で放射能を消火器で消したり、月面で煙草が燃えたり、そうとうガバガバ設定のSF作品。

もしこれを見るのなら、SFというより月を舞台にした冒険活劇だと思って見た方がいい。

 

月に向かった男女5人の宇宙飛行士は、高度な文明を持ちながらも滅びかけているキャットウーマンなる美女軍団と遭遇する。なんと夢のあることに、男はみんな滅びてしまったらしい。キャットウーマンたちはクルーで唯一の女性ヘレンを操り、宇宙船を乗っ取って、ゆくゆくは地球をも乗っ取ろうと計画していた。

 

オープニング・クレジットに、”ハリウッド・カバーガールズ” として6人くらいの名前が羅列していたし、男が全滅しているという設定からしてもっとハーレム展開になって、「男の願望 全開w」ってなって私に笑われる映画なのかと思いきや、そこまで振り切ってはいなかった。

おそらくそのカバーガールズたちと思われる小柄な美女たちが、体の線がはっきり分かるレオタード姿で登場。私にはどこが ”キャット・ウーマン” なのかは全く分からなかったけど、このシルエットが猫っぽいってことらしい。

月面人は過去の過ちで男が絶滅し、種の存続の危機に瀕しているらしくて、「男なんていらないわ、女社会の方が合理的なのよ」なんて言っていたけど、中には地球の男にクラクラしちゃうメンバーもいたりして一枚岩ではない。

その「いらない」と悪口言われている男たちは、「隊長は俺だ!」「まいいさ、じゃあ、ちゃんとやってくれよ」という具合に、猿山の猿よろしくボスの座を巡って争う(もちろん女も奪い合う)というお約束ムーブを決めていて、実際バカっぽい。

 

このように、せっかくアマゾネス軍団という設定にしたのだから、もっと「女上位!男なんて下等!」みたいな展開にして、

「男女間の優劣」とか「男という性は必要なのか(あるいは必要ないのか)」といった、現代でも議論継続中のテーマをもっと掘り下げるとか、

あるいは「現代でも割と ”男は必要ないけど女は必要(子供を産むから)” という前提に立っていることが多いが、それは本当なのか。むしろ男だけでいいという議論は成り立たないのか」など、

そんなふうに一歩進めてくれると普遍的なテーマに挑めて良かったんだけど、映画は残念ながら60分しかなく、結局は設定だけで終わってしまった感じ。

普通の尺なら「ここから深まって盛り上がるか!?」という時間帯で、急速かつ強引にラストに持っていかれてしまって、「え。これで終わりなの」と拍子抜け&肩透かし、という尻すぼみ展開。

 

残念。ま、制作陣もそんな深い作品にするつもりはなかったろうけど。

とりあえずマニア以外は見る必要はないかな。

 

ところで特記事項として、この地球人クルーの紅一点、通信士ヘレン役が、以前取り上げた映画『現金に体を張れ(1956)』で素晴らしい演技を見せていたマリー・ウィンザーだったのは収穫だったので記載しておく。