
映画『遊星からの物体X(1982)』のデータ
題名 遊星からの物体X (The Thing)
原作 ジョン・W・キャンベル・Jr 「影が行く」 1938年
監督 ジョン・カーペンター
出演 カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー、ドナルド・モファット、キース・デイヴィッド
音楽 エンニオ・モリコーネ
上映時間 109分
制作年 1982年
制作国 アメリカ
映画『遊星からの物体X(1982)』のあらすじ
舞台は南極大陸。二人のノルウェー基地の隊員が、基地から逃げ出した犬を追っていた。彼らはヘリからライフルで犬を殺そうとしながらアメリカ基地まで来てしまう。
アメリカ基地の隊員が何事かと見守る中、彼らは犬めがけて手榴弾を投げ、ライフルを打ち、必死で犬を殺そうとする。その弾がアメリカ人の隊員に当ってもやめようとしない。そして二人のうちひとりは手榴弾の誤爆で死亡、もう一人もアメリカ隊の隊長に撃ち殺される。
アメリカ基地の隊員たちは犬を保護。ノルウェー基地に問い合わせるが、通信が途絶えていた。そこでノルウェー基地を見に行くと、基地は燃え堕ち、変形した隊員らの遺体、そして何かが掘り出された氷の塊があった。
その晩、保護した犬が得体のしれない化け物に変身する。しかも "それ” は、目当ての生物を取り込み、対象と完全に同化してしまう特徴を備えていた。しかもそのスピードは速く、放置すれば1年半後には全人類が同化されてしまう計算だ。
隊員たちは仲間の誰かがすでに同化した "それ” かもしれないという疑心暗鬼のなか、"それ” と対峙することとなる。
映画『遊星からの物体X(1982)』の予告編
映画『遊星からの物体X(1982)』の感想
「うわ、なんじゃこりゃー」となること請け合い。犬が化け物に変身する時の、その造形たるや。このイマジネーションよ。
CG以前の作品なのでアニマトロニクスやメイクアップで魅せるわけだけれど、かなりグロテスクながらその創造性に感心する。
エンニオ・モリコーネの音楽もさすが。
主演はまだアクション・スターのイメージが強かったカート・ラッセル。今回も割とマッチョな役だけど、今作はそういったスターとか、そのスターが繰り広げるアクションが主題の作品ではない。
本作の最大の見どころは、極限状態での疑心暗鬼の人間ドラマ。南極という隔絶された環境で、「誰が人間で、誰が ”あれ” に乗っ取られているのか」が分からなくなる恐怖。
宇宙から来たグロテスクなクリーチャーとか、そいつに同化されてぐちゃぐちゃになる人間とか、そういうモンスター映画の体裁を借りながら、実は描かれるのは「人間同士の不信感」、そしてモンスターとではなく「人間同士の心理戦」というところがミソ。
周りの連中なんかね、誰も信用できませんよ。
原作は言わずと知れたジョン・W・キャンベル・Jrの『影が行く』。
これは1951年に『遊星よりの物体X』として映画化されているけれど、原作とは似ても似つかない作品だった。
でも今作は原作読みにも納得の出来なので、安心して見てもらいたい。なんなら若干の設定変更が、より効果的になっていて映画の方が好感持てる部分も多い。
例えば、原作だと主人公たちが今作で言うところの ”物体X” を発見し、自分たちで氷から掘り出す展開なのでノルウェー基地とかそういうのは出てこない。
でも映画ではノルウェー基地が掘り出したことになっているから、主人公たちは一体何が起きているのか皆目見当がつかないということで、謎とスリルがより高まっている。
良い脚色だったと思う。
ラストシーンも良かった。最後に残った二人のうち、どちらが ”物体X” なのか。これが物議をかもすわけだけど、こういう謎が残る演出もニクイ。
よくあるアクション映画とは一線を画した傑作だと思う。
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