
映画『老人と海(1924)』のデータ
題名 老人と海(The Old Man and the Sea)
監督 ジョン・スタージェス
出演 スペンサー・トレイシー、フェリッペ・パゾス
上映時間 86分
制作年 1958年
制作国 アメリカ
アカデミー賞 作曲賞
映画『老人と海(1924)』のあらすじ
キューバの小さな漁村に住む老漁師サンチャゴは、84日間ものあいだ魚がまったく獲れない不運続き。唯一の友だちは彼を慕う少年マノリン。しかし彼はサンチャゴの船に乗るのを両親に反対され、他の船に移ってしまった。
そして85日目、サンチャゴは「今度こそ」と一人で沖のはるか彼方まで漁に出る。そこで彼は、信じられないほど巨大なカジキを釣り上げることに成功する。
けれども本当の試練がそこから始まる。何日も何日も続く、海の上での孤独な闘い、体力の限界、そして自然の厳しさ――。
命がけでカジキを仕留めて帰路につくものの、獲物を狙ってサメたちが襲いかかり、カジキはあらかた喰い散らかされてしまう。
映画『老人と海(1924)』の予告編
映画『老人と海(1924)』の感想
原作は言わずと知れたヘミングウェイの代表作で、信じられないほど忠実に映像化している作品。私は映画→本→映画の順。
登場人物は ”老人” のサンチャゴと、”少年” マノリンのほぼ二人だけ。他にも人は出てくるけれど、役名があるような登場人物はこの二人しかいない。
他に特徴的なのはずっとナレーションが入るところ。最初から最後まで、サンチャゴの心理から置かれている状況までをナレーションが事細かく教えてくれる。
さらにサンチャゴ自身も心の中で思ったことを、独り言として事細かく丁寧に口にして私たちに教えてくれる。
この辺りは好き嫌いが分かれるかもしれない。
ブルー・スクリーンを映画史上初めて使用した作品でもあるらしくて、海上シーンはブルースクリーンによる合成と、別撮りのカジキが交差する展開。
そのため現代の目で見ると動きや迫力が少ないかもしれないけれど、そこを補うのがサンチャゴを演じたスペンサー・トレイシーの演技力。映像だけでなくサンチャゴ自身もほとんど動きがない中、たった一人、ほぼ顔芸ひとつで人生と生命の厳しさを演じ切る。
サンチャゴは敗北のヒーローとでも言うか、84日間も魚が取れない大スランプに陥り、食べる物もない状況に追い込まれ(少年のマノリンにおごってもらうほど)、85日目にしてようやく巨大なカジキを吊り上げるけれど、帰りの道中サメにほとんど食い荒らされてしまう。
そして何も得られなかったサンチャゴは、疲労困憊で貧しい小屋に帰り付き、泥のように眠る。
サメに喰い散らかされたカジキと共に村に帰り、いつものようにマストを抱えてよろよろと小屋を目指して歩き、途中で足を取られて倒れるサンチャゴの姿を見て、私は「なんだかイエス様みたいだな」と思った。
どんな妨害にも屈せず自分の信仰を貫き、大きな逆境の中でも挫けず民を正しい方向に導き、そして最後は敗北したイエス。十字架を背負ってゴルゴタの丘を行き、何度も躓きながらも最後まで信仰を捨てなかった男イエス。
サンチャゴも同じように絶望の中でも漁師としての信念を貫き、水も食料もない大海原でカジキと闘い、ようやく屈服させたと思ったら別の敵が現れ容赦なくサンチャゴを追い込むが、それでも漁師としての道を守り通す。
二人とも最後は敗けたように見えるけれど、それなのにヒーローになる点も似ている。イエスは言うまでもなく、サンチャゴも失敗したのに伝説の漁師になった。
サンチャゴは妻を失ってからは孤独の中に生き、唯一の慰めは自分を慕ってくれる少年マノリンの存在だけ。あるのは海、孤独、独り言と時間の流れのみ。
そして心の中のマノリンと、闘う相手であるカジキに親近感を寄せながら生きていく。
見渡す限り何もない広大な海上で、ひとり小舟でぽつんと漂うだなんて、なんて恐ろしいんだろう。たとえ月や星が隠れた真の闇ではなく、月も星も輝く満天の星空の下であったとしても、恐ろしいと思う。絶対的な孤独。なんだか自分の実存すら疑ってしまいそう。
私も他人ごとではないなあ。そこそこ都会に住んでいても、うっかりすると大海原に漂うサンチャゴと変わらない孤独に陥る可能性もある。
サンチャゴのマノリンのような存在を手に入れないとまずい。私のマノリン。心の中で語り掛けることが出来る相手。
そして孤独死しても「まあ、そこそこやったな」と思えるような人生。
ひとり身としては、そんな気持ちになる作品だった

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