ぱっとみ映画感想ブログ

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オペラ座の怪人(1925)

 

 

 

 

 

映画『オペラ座の怪人(1925)』のデータ

題名 オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)
監督 ルパート・ジュリアン
原作 ガストン・ルルー 「オペラ座の怪人」1909年
出演 ロン・チェイニー、メアリー・フィルビン、ノーマン・ケリー
上映時間 107分
制作年 1925年
制作国 アメリカ

 

 

映画『オペラ座の怪人(1925)』のあらすじ

舞台は19世紀のパリ、オペラ座(ガルニエ宮)。

迷路のように張めぐらされる地下に、人々が “ファントム” と呼ぶ謎の男が住みついている。支配人はファントムの為に特等席を用意しているが、誰もその姿を見た者はいない。ファントムは母親からも疎まれるほど醜い骸骨のような顔で生まれつき、その顔を仮面で隠し、誰にも知られることなくオペラ座の地下で孤独に生き抜いてきた。

姿は醜いが繊細な心と音楽の才能に恵まれたファントムは、劇場の若手オペラ歌手クリスティーヌの若さと美貌、そしてなによりその歌声に魅了され、歌の手ほどきをするようになる。クリスティーヌは声だけのファントムの存在に恐れを抱きながらも、ファントムの “天使の歌声” に魅了される。

ファントムはクリスティーヌを愛していて、自分も愛されたいと強く願い、クリスティーヌを地下にさらう。しかしクリスティーヌには幼馴染の貴族ラウルの存在があった。

 

 

映画『オペラ座の怪人(1925)』の感想

 

おや?

エリックの仮面ってこんなだったんだ。っていうか、いいの?エリック、これで。もうちょっと似合うのなかった?

オペラ座の怪人の1925年版を見ようなんていう人は、絶対にアンドリュー・ロイド・ウェーバー版のミュージカル(1986)か、その映画化版の『オペラ座の怪人(2004)』を見ていると思うから、絶対に「あれ?」ってなると思う。「エリックどーしたの。もうちょっといいのなかった?」ってなる。絶対。

 

今作はガストン・ルルー原作『オペラ座の怪人』の二度目の映画化作品。この後も何度も映画化されたり、舞台化されたりしていろいろな版があるので、見比べるのが楽しい。

ただ、私たちが今見られるものではこの1925年版が一番古いのだと思う。実際は1916年版というのがあるらしいが、私には見つけられない。

 

今回、怪奇俳優ロン・チェイニーが演じたエリック(ファントム)は、原作に最も近くて「生まれつきドクロのような、鼻のない醜悪な容貌」という役どころ。

しばらくは影や手くらいしか出てこないが、中盤以降にようやく姿を現す。だから

「ファントム! よっ!待ってました! エリック、満を持して登場!!」 ジャジャーン!!!

ってなって、出てきた途端に「おやあ?」ってなる。なんか、おめめがぱっちりなのよ。

 

で、クライマックスのひとつ、クリスティーヌがエリックの仮面を剥ぐシーンが「ぎゃー(笑)」って感じで、これまたやってくれる。

“かっぱハゲ” で “バーコード” って、そこまでするなんて非情すぎる。

 

こうなってくると、金と才能はあるけどめちゃくちゃ不細工な50歳のひきこもりドルヲタ童貞男が、若い美人アイドルに身分違いの恋をしちゃって、でも女の子にとって自分が魅力的な王子様じゃないことは自分でも分かってるから、どうやってお近づきになればいいか分かんなくって、権力をかさに「俺がスターにしてやる!」って枕を強要して、そしたらお似合いの恋人が出てきちゃって、完全ストーカー化していくという、超ありそうな現実的な話に見える。

うーん、意訳したら全然19世紀の怪奇ロマンじゃなくなった。

 

とはいえこの映画はいたってシリアスな、悲哀に満ちた、よくできた怪奇映画だと思う。DVDについている解説で、淀川長治も「こわいこわい」って言っていた。途中で切れてたけど。

ごく前半の裏方たちのシーンなどは多少コミカルに見せようとしているシーンもあるけど、作ってる人達はエリックで笑わせようとは、たぶん思っていないと思う(たぶん)。

原作で描かれるエリックの運命のドラマを、相当忠実に映画化しようとしていると思う。エリックのラストなんか、かなり悲惨。

平凡かつ善良な市民が一番怖いという結末に考えさせられる。

原作に出来る限り忠実にエリックを描こうとしたあまり、真面目が過ぎてお笑いになってしまった、そんなヴァージョンのエリックなのだった。

 

以上、『オペラ座の怪人』1943年版につづく。