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オペラの怪人(1943)

 

 

 

 

 

映画『オペラの怪人(1943)』のデータ

題名 オペラの怪人(Phantom of the Opera)
監督 アーサー・ルービン
原作 ガストン・ルルー 「オペラ座の怪人」 1909年
出演 クロード・レインズ(エリック)、スザンナ・フォスター(クリスティーン)、エドガー・バリア(ラウル)、ネルソン・エディ(アナトール)、ジェーン・ファーラー(ビアンカロリ)
上映時間 92分
制作年 1943年
制作国 アメリカ

 

 

映画『オペラの怪人(1943)』のあらすじ

ヴァイオリニストのエリックは、指をけがしてパリのオペラ座を解雇された音楽家。いまは貧しい暮らしを強いられ、自作の曲を売りながら生活している。エリックは若きオペラ歌手クリスティーンに入れ込んでおり、彼女を一流のオペラ歌手に育てるために、匿名で彼女のレッスン代を援助しつづけている。

クリスティーヌには二人の求婚者がいて、一人はラウル警部、もう一人はバリトン歌手のアナトールだ。二人ともクリスティーヌに夢中で、どちらが射止めるか競っている。若いクリスティーヌはそんな状況を楽しんでいる様子だ。

ある日エリックは、自分が作曲したピアノ曲を音楽出版会社の社長が盗もうとしていると勘違いし、社長を殺してしまう。そのとき出版社の社員に硫酸を投げつけられ、顔に硫酸を浴びたエリックは顔中焼けただれて醜い容貌になってしまう。

警察に追われるエリックは、オペラ座から小道具のマスクを盗み、それで醜い顔を隠す。そしてオペラ座の地下下水道に住みつき、クリスティーヌをスターにすることにますます執着していくようになる。

 

 

映画『オペラの怪人(1943)』の感想

かなり面白くて、夢中でみた上に連続2回見るほど楽しめた。『オペラ座の怪人』関連の作品はどれを見てもそれぞれ個性的で楽しめるのだけど、今作もすごい怪作。

マスクはわりと「しゅっ」としていて安心の出来。いたって普通で、笑えはしないやつ。

でも特筆すべきはマスクではなく、なんとファントム/エリックが、クリスティーンのおとうさんになっていた事。これにはガストン・ルルーもびっくりよ。

 

おまけにエリックはシャンデリアを落とす時、糸のこでギコギコ切っていた。「おや?」と思ったね。わりと地味なことをするじゃん。

他のバージョンではいきなりシャンデリアが落ちて、「ファントムの魔術! うわー!」って感じで、「どうやって落としたか」などという現実的な方法論は気にもとめなかった。

だから今回、エリックが根気よくギコギコしてるのを見て「地味! そしてリアル!」って思ってすごく斬新だった。

しかし脱獄経験がないのでわからないが、鉄の鎖ってあんな糸のこのようなもので短時間に切れるものなのだろうか。オペラだから一曲が長かったのかな。

 

 

今回のストーリーは、理由は分からないけど生き別れになっていた父娘が、かたや初老のしがないヴァイオリニスト、かたや新人オペラ歌手として同じオペラで舞台にかかわっていて、なぜか娘に名乗り出ることをしない父親(エリック)が、娘(クリスティーン)をスターにするためにそこまでするか的に、自分自身と他人の命を犠牲にしまくるというすごい展開。

娘の事しか目に入らないエリックは、音楽出版の社長を殺したことをきっかけに突如殺人鬼と化し、娘をスターにするためにライバル歌手のビアンカロリ(他作品でいうところのカルロッタ)、その付き人、舞台俳優を次々と殺し、あげくは思い通りにならない腹いせにシャンデリアを舞台の上に落とすという暴挙ぶり。

そして最後、クリスティーンに恐怖の告白。「地下で一緒に暮らそう」・・・って言われても、受け入れてもらうのは絶対ムリなのでは。

・・・エリック・・・やりすぎでしたな。クリスティーンもさぞかし怖かったろう。

 

音楽出版の社長を殺したのは理解できる。

貧しい音楽家のエリックは、自分のスープ代もケチってクリスティーンのレッスン代にまわしてきたのに、楽団をクビになってレッスン代が払えなくなり、そのせいでクリスティーンのレッスン自体がなくなりそうになって、彼にはもう後がない。

なので最後の砦の自作の協奏曲を音楽出版の社長に買ってもらおうとしたら、こっちは切羽詰まってるってのに社長は女といちゃついてるし、その上、その社長に曲を盗まれたと勘違いしてしまったわけだから、激情にかられた犯行という事で分からなくはない。許そう。

だけど、それ以外は完全に計画的殺害。殺し過ぎなのよ。原作とか、ウェーバー版ってそんなに殺してましたっけ? あまりにも利己的かつ猪突猛進すぎて、途中からついていけなくなったじゃん。もう少し冷静にクリスティーンの幸せを考えてあげて。

考えてみれば「曲を盗まれた!」とか言ってたのも、早とちりもいいところ。ただフランツ・リストがエリックの曲弾いていただけだったよ。しかも誉めてくれてたんだよ。それなのに「盗んだ!」って逆上していきなり首を絞めるという即断即決。社長がいくら女とチャラチャラいちゃついていたと言ってもなー。

人の話は最後まで聞きましょう。

 

一方、クリスティーンの方はモテモテで、警部ラウルとバリトン歌手アナトールの二人に奪い合われているというモテっぷり。

この二人がまるで双子みたい。そしてかわいい。

二人とも本当にクリスティーンが好きで、結婚したいと思っている。いっつも二人でわちゃわちゃとクリスティーンを取り合っていて、それなのにこの二人は仲が良さそう。

そして二人ともクリスティーンの危機には命も投げ出しそうな、騎士的な雰囲気もある。どちらかが選ばれる時が来ても、選ばれなかった方もクリスティーンの幸せのためなら尽力してくれそうな気もするほどで、二人とも素敵。

だけどクリスティーンの方は二人を「いいお友達」くらいにしか考えてなさそうだし、若くてまだまだ夢を追いかけていたい感じで、結婚を考えるには時間がかかりそう。

ラストでクリスティーンは、二人の男に熱烈に言い寄られ、でも「私は歌に生きるわ!」とか言って二人とも袖にして、希望に満ち満ちてきらきらと青春を謳歌していた。

 

一方、エリックの方は悲壮感満載。

最後まで娘には自分が父親だとは気がついてもらえず、崩壊したオペラ座の地下で(おそらく)息絶えるといった、かなり悲惨な結末。落差がすごい。

でも、クリスティーンが生き生きキラキラして終わるラストシーンは、私にとっては微笑ましく、心温まる結末。いいエンディングだったと思う。

見てよかった。

 

ということで、『オペラ座の怪人』1962年版に続く。

 

 

オペラの怪人(字幕版)

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