映画『大時計(1948)』のデータ
題名 大時計(The Big Clock)
監督 ジョン・ファロー
出演 レイ・ミランド、チャールズ・ロートン、モーリン・オサリヴァン
上映時間 95分
制作年 1948年
制作国 アメリカ
映画『大時計(1948)』のあらすじ
主人公は人探しが得意な新聞社の編集長ジョージ。
ある日社長が衝動的に愛人ポーリーンを殺害してしまい、ポーリーンが直前に会っていた「男」に罪をなすりつけようと、その「男」探しをジョージに命ずる。
ところがポーリーンに会っていたのがジョージ自だったため、ジョージはポーリーン殺しの濡れ衣をかけられるだけでなく、自分で自分を探すはめになる。
映画『大時計(1948)』の予告編
映画『大時計(1948)』の感想
映画が始まってすぐのオープニングのカメラワークが良かった。
ニューヨークの摩天楼を映し、カメラがパンしていくと物語の舞台となる出版社ビルが映り、その1階?のホールにぐーーーっとズームインしていって、建物の中に入る。
なめらかだったし、当時は今みたいに小さなカメラじゃないと思うから、どうやって撮影したのかなと思った。出版社ビルの入口の手前に、すごく邪魔な社名の立体オブジェがあるんだよね、、、カメラはそれを乗り越えて建物内に入っていくの。そしてそのままドラマが始まる。
・・・やっぱりどうやって撮影したんだろう。
主役のジョージは割と軽めの二枚目で、仕事は出来るけど仕事に全振りしていて家庭がおろそかになっている。
まず社長が横暴で、ジョージが休暇を取ろうとすると必ず邪魔してきて、どうしても休暇を取ることができない。おかげでジョージと妻のジョージェットは結婚して何年も経つのに新婚旅行にも行けていない。
とはいえジョージ自身も結局は仕事が好きだから、何が何でも休暇を取るぞという気迫に欠けている。取ろうとするんだけど、最終的には仕事を選んでしまう。
妻のジョージェットは健気にも耐えてジョージを支え、見守っているけど、今ならSNSなどで非難囂々でしょう。離婚まであるかも(ま、高給取りなので我慢するかもしれないけど)。
私はやだな。こういう男。演じたレイ・ミランドがジェームズ・スチュアート似で、それも軽いジェームズ・スチュアートって感じであんまり好きじゃなかったのもあるかもしれないけど。
どんなに高給取りでも、自分が軽んじられていると感じるくらいなら、貧しくても自分の稼いだお金で一人で生きていった方がいい。私は。
監督はジョン・ファローで、主人公の妻を演じたモーリン・オサリバンの旦那さん。
社長役はチャールズ・ロートン、画家のルイーズ役にはエルザ・ランチェスターで、この二人も夫婦だから、この映画は夫婦は二組も出てくる(ファローは監督だけど)。
私エルザ・ランチェスターって好きだな。彼女は先月取り上げた『ミステリー・ストリート(1950)』にも出ていたけれど、賢そうで、敵に回したら手ごわそうでありながらもチャーミングなの。
今回は画家の役で、お洒落でやや個性的ないでたちで登場し(フジコ・ヘミングみたいな)、それぞれ父親が違う子供がたくさんいるの。それを彼女が一手に引き受けて育てている。
大きな部屋で、4~5人もいる子供たちの遊び場みたいになっていて、その隅っこにアトリエがある間取りだったと思う。半地下みたいに数段下がったところにあったかもしれない。
幼い子供たちが騒ぐとうるさいから別室のアトリエに引き籠って絵を描くとかではなく、子供たちが騒いだりもしている開放的な空間で絵を描く環境をあえて作ってるっていう感じがして、魅力的な女性だなと思った。自分の子供を愛してるんだなって。
ま、脇役なんだけど、この映画で一番好きな役だった。
それからもう一人、チャールズ・ロートン。名優の誉れ高い俳優だけど、今回も上手いとこを見せてくれた。
まず、愛人ポーリーンに「ぶよぶよしてて気持ちが悪い! 女にモテないくせに!」とかなんとか口汚く罵られ、それを聞いているロートンがアップになる、その時の顔。鼻梁がピクピクと引き攣る演技を見せてくれる。
それから最後の最後、エレベーターに後ろ向きに入っていって、、、の時の顔。こちらはアップにならないから良くは見えないんだけど、相当上手い顔していたと思う。
このエルザ・ランチェスターとチャールズ・ロートン、夫婦で演技派って、どういう日常生活を送ってるんだろう。興味深い。
ストーリー自体は「自分で自分を探す」という着想が面白くてそれなりに楽しめたけど、そうはいっても「まあまあ」ってとこかしら。