- 映画『黒猫の怨霊(1962)』のデータ
- 映画『黒猫の怨霊(1962)』の予告編
- 映画『黒猫の怨霊(1962)』のあらすじ
- 映画『黒猫の怨霊(1962)』の感想
- 映画『黒猫の怨霊(1962)』全体の感想
映画『黒猫の怨霊(1962)』のデータ
題名 黒猫の怨霊 (Tales of Terror)
監督・制作 ロジャー・コーマン
脚本 リチャード・マシスン
原作 エドガー・アラン・ポー 「モレラ」「黒猫」ほか
出演 ヴィンセント・プライス、ピーター・ローレ、ベイジル・ラスボーン
上映時間 88分
制作年 1962年
制作国 アメリカ
映画『黒猫の怨霊(1962)』の予告編
映画『黒猫の怨霊(1962)』のあらすじ
第一話『怪異ミイラの恐怖』
生後数か月で母親に死なれ、父から愛されることもなく、幼い頃に家を出されて成長した娘レノーラと、最愛の妻を失った悲しみから立ち直れず、娘そっちのけで酒浸りの生活を送っている父親。娘の命があと数ヶ月と分かり二人は再開するが、なんと父は母モレラの遺体を埋葬せず、ミイラにして自分の手元に置いていた。そこへ自分が死んだのは娘のせいと逆恨みした母モレラの霊が現れ、娘への報復を始める。
第二話『黒猫の怨霊』
ザルのように大酒を飲み、働きもせずに妻の金を奪って酒をかっくらうアル中の男、モントレソーが、「ワイン見本市」で気取ったワイン通のルクレイシに利き酒対決を挑み、酔いつぶれて送ってもらうはめに。するとそこで妻とルクレイシが恋に落ちてしまう。モントレソーは妻とルクレイシを殺して壁に塗り込めるが、いつもいじめていた黒猫に秘密を暴かれる。
第三話『人妻を眠らす妖術』
余命いくばくもない老人ヴァルドマアル。彼は病と死の苦痛から逃れようと、催眠術師カーマイケルを雇っている。
このふたりが「臨終時における催眠」という前例のない人体実験に挑む。ヴァルドマアルはやがて息を引き取るが、肉体は死んでも、カーマイケルが術を解かない限り精神は永遠に生き続けることとなる。時間が経ち、肉体が傷みはじめてもヴァルドマアルの苦しみの声が部屋中に響き渡る。それを尻目に、カーマイケルは自分の欲望をむき出しにしていく。
映画『黒猫の怨霊(1962)』の感想
第一話『怪異ミイラの恐怖』の感想 ★★
この作品の原作とされているのが、ポーの超短い短編 『モレラ』。文庫でわずか8ページという短さ。でもストーリーが全然違う。
映画版だと、父親は妻モレラを猛烈に愛していて、愛しすぎて埋葬できずミイラにして手元に置いておくというヤバさ。娘なんかそっちのけで妻への愛に引きこもって、自分を可哀想がっている。
でも原作は真逆。妻のことは「愛を思ったこともなかった」と言っているくせに、でも「献身的な尽くす妻だったからすごく幸せだった」などと勝手なことを言っている。それで娘を溺愛。その割に10歳になるまで名前すら付けないで育てていたりなんかしている、訳の分からん男だ。
そして最大の違いは、映画のモレラは「化けて出てくる」という古典的なやりかたなのだが、原作の方は自力でクローンとして生まれ直してくるという、もうほとんどSF。
でもポーの時代はまだSFの時代じゃないから、SFになりそうでならない、もう少しのところでならない、というところが原作の面白いところ。わずか8ページで。
だから・・・これは原作の方に軍配を上げない訳にはいかないな。
第二話『黒猫の怨霊』の感想 ★★★★★
これは傑作。
DVDのチャプターの題名からしてもう笑える。
「俺の金を」
「酒を飲む金を」
「妻の貯め込んだ金を」
「昨夜は大金を」
となっていて、DVDの制作スタッフがこの映画が大好きで、すごく楽しんでる感じがする。
そして割といつもシリアスな演技が多いのに、ヴィンセント・プライスのコメディ演技にすっかり心を射抜かれてしまった。好き。
第一話では死相すら出ていたのに、この第二話では血色もよく、頬はバラ色で、表情はニコニコ、体はウキウキと健康そのもの。若返ってる。
そしてコミカルな大げさな演技!表情がくるくる変わって、かわいい、楽しい、見ていてうれしくなってくる!
ピーター・ローレの妻役ジョイス・ジェイムスンも、飲んだくれの旦那にひどいめにあっているわりには「ほわん」としてて可愛い。それでひょんなことで出会ったヴィンセント・プライスに恋しちゃって、うれしそうに語る表情も可愛いの。うまいんじゃないかな、この女優さん。
恋する二人は生き生きウキウキしちゃうのね。
そんな妻とヴィンセント・プライスを、ピ-ター・ローレは壁に塗りこめちゃうんだけど、軽いタッチのままで進むから全然グロくも怖くもない。大丈夫。
原作とはまるっきりテイストが違うけど、こちらももかなり気に入った。
第三話 『人妻を眠らす妖術』の感想 ★★★
結構、衝撃。「死と永遠の生」について少し考えてしまった。
原作よりも映画の方がリアリティを持って私に働きかけてきて、傑作だった。
ヴァルドマアルはただ痛いのが嫌だっただけなのに、意識だけが漆黒の暗闇の中を永遠に・・・。地獄に行くより怖い。
それにしても、人を人とも思わず、ただの実験台(しかも永遠の)にしか思わない男カーマイケル。死ねなくなったヴァルドマアルに向かって、ちゃんとした死と引き換えに約束させようとするその条件が実にしょぼかった。
ここまでやって、それなの?みたいな。
ところで、映画の内容は人妻が眠ったりはしないので邦題のことはよくわからない。
あれかなあ。
日本で公開された時、配給がピンク映画専門の大蔵映画だったというから、原題のままじゃ客の喰いつきが弱いと思って、ちょっとそれっぽい邦題を無理くり付けた感じかしら(原作は「ヴァルドマアル氏の病症の真相」)。
映画『黒猫の怨霊(1962)』全体の感想
実際このDVDは掘り出し物だった。
二話目が特に傑作だったし、思いがけずピーター・ローレが出ていたのが大収穫。
原作はエドガー・アラン・ポーの数ある短編小説の中から三篇を選んで脚色し、映像化したオムニバス映画。
主演は ”あの” 有名な、マイケル・ジャクソン 『スリラー』 のPVでナレーションをしている ”あの声” のお方、ヴィンセント・プライス。個人的に推しの一人。若干だけど隙があって、やや間が抜けているように見えるところが好き(笑顔とか)。
※ホラー界のスター、ヴィンセント・プライスへのリスペクトを感じる起用。彼の渋い美声のナレーションは6’30くらいから。
このプライスが3作品ともに出ていて出ずっぱり。第一話の父親役、第二話のルクレイシ役、第三話のヴァルドマアル役を演じている。
監督は低予算映画の帝王、ロジャー・コーマン。第一話のセットがTVドラマみたいで、ちゃっちい所もご愛嬌。
脚色を手掛けたのは、『ある日どこかで』の原作者リチャード・マシスン。
第一話『怪異ミイラの恐怖』の原作「モレラ」はこちらに集録 ↓
第二話『黒猫の怨霊』の原作「頃猫」、第三話『人妻を眠らす妖術』の原作「ヴァルドマアル氏の病症の真相」はこちらに集録 ↓