映画『金星ロケット発進す(1960)』のデータ
題名 金星ロケット発進す(Der schweigende Stern)
監督 クルト・メーツィヒ
出演 谷洋子、オルドリッチ・ルークス、イグナーチ・マホフスキ、ミハイル・N・ポストニコフ
上映時間 78分
制作年 1960年
制作国 東ドイツ/ポーランド 合作
映画『金星ロケット発進す(1960)』のあらすじ
1985年、ゴビ砂漠で地球にはない物質でできた奇妙なかけらが発見された。
調査の結果、その ”かけら” は1908年のツングースカ大爆発と関連があると予測された。実は金星には優れた知的生命体がおり、彼らは宇宙船で地球へ向かうも大爆発。その際重要な情報を記録した ”かけら” を船外に発射したものであり、金星人からのメッセージが含まれる記録装置であると断定。解読を試みるが、メッセージを読み取ることができなかった。
大爆発から70年以上の年月が経つにもかかわらず、それ以降金星からのアクションはない。金星に向けて電波を送信しても反応はない。そこで優秀な人材を集め、こちらから金星探査に赴くこととなる。
選ばれた科学者たちは宇宙船「コスモストレイター号」で金星に向かう。いくつかの危険を乗り越え金星に到着するが、すでに金星文明は滅びていた。
映画『金星ロケット発進す(1960)』の感想
もしや行かなければよかったのでは。
「金星人が地球を侵略しようとしているらしい!人類の危機!!」→「金星まで行ってみたら自滅して全滅していた」→「おっとうっかり地球に向かう核爆弾のスイッチを入れちゃった」→「人類の危機」→「なんとか解除」→「人類を救ったヒーロー誕生」→「やっぱり核は怖いし、平和が一番だね」という流れ。
行かなけりゃ何もなかったかもしれないのに、自分からわざわざ出かけて行って自分でスイッチを押して自分で解除して戻ってくるというマッチポンプぶり・・・お前らはアメリカ人なのか? ケネディか?
まあ、ああいう物は残しておくと、いつの日か誤作動で発射されるかもしれないから、未然に防いだということなのでしょう。
しかもスミコが金星から植物を持ち帰っていた。
映画のラストで「芽が出たのよ!」って、「あなたは金星に生命がいた証拠を見つけたのよ! あなたの命は無駄じゃなかったわ!」って、感動的ないい話にして終わらせようとしてたけど、 高度な文明の痕跡はいっぱいあったから、別にその植物がなくても生命がいた証拠は十分そろってたと思ったけど。
このあと『リトルショップオブホラーズ(1986)』みたいにならない?このあと大繁殖して被害者ぶって正義ぶってからやっつけるんでしょう? やっぱりアメリカ人なのか? ケネディか?
あと、ケガした船長のオペをしていたのが内科医とはいえ医者のスミコさんではなく、数学者だったのも気になった。まあ船長は地球に帰ってきたときピンピンしていたから、手術は上手くいったみたいだけど。
それからそれから、後にあの『スター・ウォーズ・シリーズ』のR2-D2に影響を与えた・・・かどうかは分からない、キャタピラーで動く “超高性能ロボット" オメガちゃん"。高性能を謳う割には、「天気予報が出来ること」「放射能を測定できるらしいこと」「チェスがやたらと強いこと」くらいしか、私にはその高性能ぶりは分からなかった。
とまあ、突っ込みはこれくらいにして、映画自体は1908年に実際にあった、シベリアに隕石が落ちたツングースカ大爆発をネタに、東ドイツとポーランドが合作したレアSF。火星ではなく、金星に行くというのもレア。
日本人女優、中国人俳優、アフリカ系黒人俳優という国際色豊かな配役で、しかもみんなが活躍する良い役で、まったく人種的偏見を感じなかった。
特筆すべきは日本人クルー、スミコの存在。内科医であり、金星に向かうコスモストレイター号の紅一点にして主役という、非常に名誉な役柄を与えられている。
このスミコを演じた谷洋子さんとは何者なのか。どうやら日本初の国際女優らしい。時代は違えど、早川雪舟の女性版ってとこかしら。
その経歴がすごい。50年代から60年代にかけてヨーロッパ映画を中心に出演。結構主演クラスで出演していたようで、1960年には『理由なき反抗(1955)』などで知られるニック・レイ監督の映画 『バレン(1960)』 という映画にはヒロイン格で出演。なんとアンソニー・クインと共演している。
他にもダーク・ボガード、シャーリー・マクレーン、ディーン・マーティンなんかが主演している映画にも出ているし、日本映画でも黒沢明、溝口健二、谷口千吉といった錚々たる映画監督と絡んでるっぽい(ノンクレジットかもしれないが)。
しかし私にはあんま美人には見えなかった。白人から見るとこういうのがアジア系美人なんでしょうか。
「女優が美人である必要はないでしょう」と怒られそうだけど、この役どころであるオギムラスミコさんが、めちゃくちゃ「イイ女」という立ち位置なのですよ。
「人類で初めて月面に降り立った」という、まるでアームストロング船長のような高級男性のブリンクマンさんに長年想いを寄せられていて、その求愛を「宇宙に必要ないものは持ち込むべきじゃないわ」なんてもの凄くいい女なセリフを言ってたしなめていたし、
夫を月面で亡くしたらしく、その亡くなった現場であるクレーターがモニターに映った途端、悲しげに顔を背けて立ち去ったりと、彼女だけやけにドラマチックなの。
他のクルーなんて私生活のことはまるっきり触れられていないのに、スミコだけが特別扱い。スミコだけに「愛が集中」している感じ。
なんか納得いかなかったよ(谷さん、ごめんなさいね)。
※私はDVDを持っていますが、アマプラで見た方が100倍画質が綺麗です。