
映画『風の遺産(1960)』のデータ
題名 風の遺産(Inherit the Wind)
監督 スタンリー・クレイマー
出演 スペンサー・トレイシー、フレドリック・マーチ、ジーン・ケリー、クロード・エイキンス、ディック・ヨーク、フローレンス・エルドリッジ
上映時間 129分
制作年 1960年
制作国 アメリカ
映画『風の遺産(1960)』のあらすじ
アメリカ南部の小さな町。高校教師のバートは、州の法律に反して進化論を教えたとして逮捕される。この出来事は町中の注目を集め、やがて全国的な話題へと発展。信心深い町の人々はバートを非難し、事件は単なる裁判を超えた「信仰vs科学」の象徴となっていく。
裁判が始まると、検察側には著名な政治家で敬虔なキリスト教徒でもあるブレイディが立ち、バートの弁護には自由主義的な思想を持つ名弁護士ドラモンドが担当することとなる。今でこそ疎遠だが、二人はかつて親友同士であり、ブレイディの妻サラはドラモンドも心を寄せた女性だった。
とうとう裁判が始まり、二人は思想的に激しく対立していく。法廷ではまず、聖書の解釈や科学の位置づけをめぐり、白熱した議論が繰り広げられていく。数々の証人も、陪審員たちも、傍聴者たちも、全員が敬虔なキリスト教徒という状況の中、ドラモンドは不利な戦いを強いられる。
審理が進む中、ドラモンドはある妙案を思いつく。なんと検察官のブレイディを証人席に立たせ、聖書の記述を文字通りに解釈することの矛盾を問いただしはじめたのだ。これが裁判の大きな転換点となり、ブレイディはドラモンドから畳みかけられるキリスト教の矛盾を前に、冷静さを失っていく。
最終的にバートは有罪となるが、ドラモンドの弁護の甲斐あって、罰金刑という軽い罪が課せられる。しかしドラモンドはすぐに控訴の意志を示し、問題は最高裁に持ち越される。そして精神的に追い詰められていたブレイディは法廷の混乱の中で倒れ、やがて亡くなる。
映画『風の遺産(1960)』の予告編
映画『風の遺産(1960)』の感想
”進化論は聖書への冒涜だ!”というわけで、1925年にテネシー州で実際に起きた「モンキー事件」を映画化した作品(DVDの説明文より)。
主演はアカデミー賞主演男優賞を2度受賞した名優スペンサー・トレイシーと、同じくアカデミー賞主演男優賞を2度受賞した名優フレデリック・マーチ。
そこにあのミュージカルの大スター、ジーン・ケリーが新聞記者役で絡んでくる。今作のジーン・ケリーは、踊りません。
それから狂信的な牧師役にクロード・エイキンス。かなりいっちゃっている牧師を熱演している。
映画の内容は、ダーウィンの進化論が世間に浸透し始めた20世紀初頭、「人間は神がつくった」という前提の創造論が主流のアメリカ南部で、進化論の授業を行った青年が逮捕され、裁判にかけられるというもの。つまり、人気漫画『チ。―地球の運動について―』の生物学版。
アメリカでは今でも創造論を教えている学校があると聞くから、今から100年前であれば言わずもがな。映画では確か、主役のバートは絞首刑を求刑されていたと思う(最後は罰金刑に収まるけれど)。
そこへ現れるのが、検察側のブレデリック・マーチと、弁護側のスペンサー・トレイシー。二人とも名優の名に違わぬ力演を見せつけてくれる。
二人とも登場してしばらくは「静」の演技という感じ。長く疎遠になっていたとはいえ、元々は親友同士。特別のことをしたり、語ったりしなくても、お互いのことを知り尽くしているという感じで、温かくて好ましい。
それが一転裁判が始まると、二人とも死闘を繰り広げると言っても言い過ぎじゃない程の壮絶な闘いが繰り広げられる。それも延々と、超高度な口喧嘩がこれでもかと。
二人とも結構な年だし、夏の南部は暑いしエアコンなんかないから、二人とも汗だくで唾を飛ばしまくって、夏と裁判の熱気が画面から伝わってくるよう。ほんとに死闘という言葉がぴったりな裁判シーンだった。
結局、ドラモンドはどちらか一方を否定するのではなく、異なる考え方の共存の重要性を示唆する感じで、思想の自由と寛容の価値を問いかけながら、実に真っ当な感じで映画は終わる。
バートの刑も罰金刑と非常に穏当な結果なので、まあ常識の範囲内に収まったなという感じ。
ところで、検察側のブレイディの妻サラは昔ドラモンドも思いを寄せていた女性らしく、ドラモンドとサラの再会の様子も、お互いの間に流れる愛情が控えめかつ丁寧に描かれていてよかった。
サラを演じたフローレンス・エルドリッジの、年老いても素敵な女性という佇まいも相まって、なかなか印象的な二人だった。
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