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彼らの最後の夜(1953)

 

 

 

 

 

映画『彼らの最後の夜(1953)』のデータ

題名 彼らの最後の夜(Leur dernière nuit)
監督 ジョルジュ・ラコンブ
出演 ジャン・ギャバン、マデリン・ロビンソン
上映時間 98分
制作年 1953年
制作国 フランス

 

 

映画『彼らの最後の夜(1953)』のあらすじ

英語教師のマドレーヌがパリにやってくる。マドレーヌは列車で知り合った司教に紹介された下宿に住み始める。そこには大学生や裁判官、図書館司書などインテリが集まる下宿だった。

就職活動が上手くいかないマドレーヌだったが、図書館司書ピエールの紹介で職を得ることに成功する。ところが表向きは図書館司書であるピエールは、実はギャングのボスという裏の顔を持っており、商店の床屋から金を搾り取っていた。

ある日ピエールは仲間を引き連れ工場を襲い大金をせしめるが、床屋の陰謀に合い、警察に捕まってしまう。

追っ手をかわすピエールの逃亡を、マドレーヌが甲斐甲斐しく助け、共に追われるようになる。

 

 

映画『彼らの最後の夜(1953)』のワンシーン

www.youtube.com

 

 

映画『彼らの最後の夜(1953)』の感想

ジャン・ギャバン主演作で、男のメロドラマ。

 

ピエールが強盗に行くのに白昼堂々街なかで車のトランクに乗り込んで行ったり、襲うときも覆面すらしないとか、”フランス映画らしい” 大雑把さもあった。

でも全体的に言えば、「マドレーヌはなぜこうまでピエールに肩入れするんだろう」といった疑問や、「何かありそうなマドレーヌの過去」がなかなか明かされないなど、興味を繋ぐのが上手くて最後まで一気に見た。

 

でも結果はすべて大したことない、というオチ。

おそらく二人のメロドラマが主題で、マドレーヌの過去ではなかったんでしょう。

でも最後まで引っ張られたからいいじゃないか。

 

最後まで飽きずに見られたのは、ジャン・ギャバンという超有名なオッサンと、訳知り顔の熟女マデリン・ロビンソン(熟女といっても30代だけど)、この二人の大人な渋い魅力がなせる業だと思う。

 

ピエールは実に頼りがいのある男で、同じ下宿の大学生の女の子が本を探しにくれば的確にアドバイスをし、マドレーヌが仕事を探していると聞けばさりげなく仕事を斡旋する。余計なことは喋らず、一見愛想がなさそうだが、みんなが慕っている。

大袈裟に恩を着せたり、優越感に浸っている様子などもなくて、ナチュラルに自然に周りに親切という佇まい。

いいね。この在り方。

 

そして謎の女マドレーヌ。

堅気の女にしか見えないのに、ピエールの逃亡を手伝う手際が完璧すぎて、過去になんかアンダーグラウンドな経験があるんじゃないかと思うほど、実にあやしい。

そういえば最初っからピエールに狙いを定めて虎視眈々とチャンスを狙い、夕飯を持っていくチャンスを見つければそれを逃さず食事を運ぶメイドから夕飯を取り上げ、コンコンと自分からピエールの部屋へ突撃し、ピエールのケガを手当てしてからは早くも妻気取り、いや、共犯者気取り。怖いほどの距離の詰め方。

知り合って間もなくて、マドレーヌにとってはまだただの親切な下宿人でしかないはずのピエールが銃で撃たれて出血してるのを見て、まったく騒がず慌てもしなければ質問もせず、黙ってテキパキと手当をし、穴の開いて血で染まったシャツを持って帰って洗濯し、早くも共犯者顔してるの。

すごい決断力。一瞬で「あなたと地獄に落ちますわ」と決めたわけか。

 

そしてピエールが強盗して警察に追われている!と知った途端、ピエールに接触して協力を申し出、ピエールが指示した以上のこと、例えば帽子を買い、サングラスを買い、コートを買い、変装道具を一式そろえて戻っていく。

その後も食事を買ってきては食卓の準備をし、小さなスミレをコップに活けて潤いも演出し、靴下の洗濯までやってのける。

この甲斐甲斐しさ、まめまめしさには軽く感心したね。内助の功がすごすぎる。

現代に生きる女の私としては、彼女の男性に対する態度は、見ていてちょっとイラっとしたね。うわー面倒くさそうな女だなって。

 

とはいえピエールよりも、このマドレーヌの妙な存在感がこの映画を引っ張っていたと思う。

 

 

話は変わって、個人的にはピエールやマドレーヌが住む下宿の様子がうらやましかった。

下宿と言ってもちょっとしたホテルみたいに受付カウンターがあって、住民はいつもそこに鍵を預けて出かけ、帰ると鍵を受け取り、部屋にあがる。メイドがいて給仕や部屋の掃除などもしてくれる。

食事は食堂で一同に会してなされて賑やかだし、サロン的な空間もあって、空いた時間はそこでカードをやったり新聞を読んだり、勉強したりしている。

ここの住民はインテリが多くて民度も高そうだし、孤独にはまりがちの現代人である私の目には、たいへん好ましい空間に見えて、つくづくうらやましかったね。

昔は日本にもこういう下宿というのが沢山あったと聞く。70年代くらいまでなのかな。

いいなあ、こういう生活。

 

 

彼らの最後の夜

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