映画『海底2万マイル』のデータ
題名 海底2万マイル(海底2万哩) (20000 Leagues Under the Sea)
監督 リチャード・フライシャー
制作 ウォルト・ディズニー
原作 ジュール・ヴェルヌ 「海底二万里」(1870)
出演 ジェームス・メイソン、カーク・ダグラス、ポール・ルーカス、ピーター・ローレ
上映時間 127分
制作年 1954年
制作会社 ウォルト・ディズニー・プロダクション
制作国 アメリカ
映画『海底2万マイル』のあらすじ
1868年、海洋学の権威アロナクス教授と助手のコンセイユは、南太平洋に出るという怪物の正体を調べるため、政府の軍艦に乗り込む。何の成果も上げられないまま三か月半が経ったある晩、とうとう怪物と遭遇。攻撃を開始するが、戦闘中ふたりは海に投げ出されてしまう。
漂流していた二人は巨大な潜水艦を発見。助けを求めるが、居合わせた銛打ちネッド・ランド共々捕獲され、ネモ船長率いる潜水艦ノーチラス号での生活が始まる。
最初こそネモ船長を警戒していたアロナクスであったが、海底での自給自足の生活やネモ船長の天才的な頭脳、思想などに感化され、徐々に共感を深めていく。しかしネッドとコンセイユは一刻も早く潜水艦を抜け出そうと、様々な手を使って脱出を試み、ネモ船長に逆らうのだった。
三人を乗せたノーチラス号は、食人族や巨大イカに襲われながらも、ネモ船長の基地バルケニア島へ向かう。しかしそこには、ネモ船長の発明を手に入れるため、政府が派遣した軍艦が待ち受けていた。自らの発明を軍事利用されることを嫌うネモ船長は、島ごと基地を爆破しようと試みる。
映画『海底2万マイル』の感想と説明
ジュール・ヴェルヌ原作の有名小説を、ディズニーがみごとな特撮で映画化した海洋冒険映画の金字塔。古き善き19世紀のスチーム・パンク風なSF作品で、ネモ船長が乗る潜水艦「ノーチラス号」の造形や、内部の内装・美術がすばらしい。
この手の映画によくある人食い人種も出てくるし、嵐の中で戦う巨大イカは本物みたいで自然。説得力ある。
主役のひとりはマッド・サイエンティストの代表格ネモ船長。その過去は悲しみと怒りに満ちている。
彼は天才的な頭脳を持っていて、巨大エネルギーを生み出す動力源を発見する。映画では分かりにくいが、それを軍事利用しようとする政府に利用されるのを拒否して、妻や息子を拷問され失った過去を持つ。
その後囚人が送られる島で戦争の道具である火薬を運ぶ強制労働を課せられていたが、囚人たちを引き連れて脱走。バルケニア島を拠点とし、潜水艦ノーチラス号を作り、海底を自由自在に行き来して自給自足の生活を送っている。
そんな過去の経験から、ネモは地上の文明や政府を強烈に憎んでいる。その程度は地上の法に従わないだけでなく、地上の食べ物も一切食べないという徹底ぶり。
ネモはマッドなイメージが強いけど、巷で言う程マッドではないと私は思う。孤高の人だけど、彼には運命を共にしてくれる仲間がいる。独りぼっちではないのだ。
原作も含めて、ネモと乗組員の交流は大して描かれず、みんな余計なことを言わずに黙々と役割をこなしているという印象。なのに、きっと心は一つなんだろうなと思わせる。
ネモは孤高の人なのに、ネモを信頼して黙ってついてくる部下がいる。みんな最後はネモ船長と共に海の藻屑になっても構わないと思っていそうな、そんな関係。武士道。
私はネモの「孤高の佇まい」みたいなものに、結構憧れている。
ただもったいなかったのは、ネモ船長らは海底で乗組員の埋葬を行うのだが、その時十字架を掲げているところ。
宗教だけは地上の既成宗教というのはいただけない。ここはひとつ、宗教もオリジナルの宗教を編み出していてほしかった。心底残念。
ネモ船長も格好いいけど、アロナクス教授をやったポール・ルーカスも、さすがハンガリー人ということでアメリカ人とは違ったノーブルな格好良さ。
でも私、『八十日間世界一周(1956)』などのデヴッド・ニーヴンと印象がかぶってしまってね、、、
時間がたつとアロナクス教授もニーヴンだったような気がしてしまうのは年のせいかしら。
そしてネッド役のカーク・ダグラスの能天気さ。見ていて楽しい。アクションもさることながら、ギターを抱えて歌ったり、すごくお調子者な感じで軽妙。いいよ、よかったよ、カーク。
そして私の御贔屓ピーター・ローレがアロナクス博士の助手コンセイユ役。相変わらずのギョロ目でいい味出してる。なんか可愛い。
ところでこんなに題名に表記ゆれが激しい作品も珍しくて、原作は『海底二万里』、映画版は『海底2万哩』、ビデオ版が『海底20000マイル』、DVDだと『海底2万マイル』、小説版なども含めると『海底二万海里』、『海底二万リュー』、『海底二万リーグ』、『海底二万マイル』という具合。ぜんぶ同じ作品。
おまけに1916年版の映画は『海底六万哩』だから、もうなにがなにやら分かりませんな。なぜ六万になった。
というわけで原題はいったい何なのかと。
原著はフランス語で、「Vingt mille lieues sous les mers」、
英語版は 「Twenty Thousand Leagues Under the Sea」であった。
フランス語の原題をそのままGoogle翻訳にかけてみたら「海の下の二千のリーグ」とでた。そして英語の原題をGoogle翻訳にかけたら「海の下の二千のリーグ」だった。
・・・リーグが分からないので、さっぱり役に立たない。
そこで各単位をkmにすると、
1リュー = 4km
1リーグ = 4.828032km
1マイル(=1哩)=1.609344km (哩・・・マイルの漢字表記)
1里・・・約3.9km
1海里・・・1.852km
とのこと。
これを元に各題名をkm単位に直してみる。
『海底二万リュー』 は 4km×20,000リュー=80,000km
『海底二万リーグ』 は 4.828032km×20,000リーグ=約96,560km
『海底2万哩』『海底20000マイル』『海底2万マイル』『海底二万マイル』 は 1.609344km×20,000マイル=約32,186km
『海底二万里』 は 3.9km×20,000里=78,000km
『海底二万海里』 は 1.852km×20,000海里=37,040km
となって全然距離がちがう。
フランス「1リュー」から英語「1リーグ」ですでに0.8kmの差があるから、2万リューともなると1600kmもの誤差が出ている。東京からなら直線で上海くらい離れている。
「1リュー」から「1マイル(哩)」となると、8万kmに対して約3万2000kmって2.5倍も違う!「海里」も同じくらい。これは誤差なんていうものじゃない。
1916年版が「海底六万哩」になっているのは、単純にリーグはマイルの約3倍だから、2万リーグを3倍して6万マイルにしたと思われる。原作のフランスの単位リューを完全無視。
結局、フランス語の原題に一番近いのは『海底二万里』という結果に。
「リュー」→「里」の選択が一番近いのに、なぜマイル(哩)にしたのだろう。
私が思うに「里」だと和風すぎるということで、外国っぽくしたかったのだろう。「日本=ダサい、外国=おしゃれ」的な、日本人によくあるコンプレックスが感じられる。