映画『船乗りシンドバッドの冒険(1947)』のデータ
題名 船乗りシンドバッドの冒険(Sinbad the Sailor)
監督 リチャード・ウォーレス
出演 ダグラス・フェアバンクス・Jr、モーリン・オハラ、アンソニー・クイン、ウォルター・スレザック、ジョージ・トビアス
上映時間 117分
制作年 1947年
制作会社 RKO
制作国 アメリカ
映画『船乗りシンバッド(1947)』のあらすじ
シンドバッドがいつもの「7つの冒険」の話を身振り手振りで、そりゃあもう自慢げに仲間たちに話していると、仲間の一人に「その話は聞き飽きた。いつも同じ話じゃないか」とキビシイことを言われてしまい、「じゃあ」とばかりに「8つめの冒険」を話し始める。
仲間のアブーと一緒に持ち主のいなくなった船を手に入れたシンドバッド。船にはアレクサンダー大王の財宝を記した宝の地図があった。
ところが船は没収され競売にかけられる。その競売で競り合った謎の美女と知り合ったシンドバッドは、真夜中彼女に会いに行く。彼女の名はシリーン。そして有力な首長エミールが持つハーレムの一員だった。シリーンはシンドバッドが胸から下げたペンダントを見て、デリアバーの王子様だと勘違いし、シンドバッドに興味を持つ。
シンドバッドがシリーンを口説いていると、謎の人物になぜだか命を狙われる。シンドバッドはその場を切り抜け、地図に書いてあった財宝の場所デリアバーに向けて船を出すが、なぜか地図は失われており、おまけに追いかけてきたエミールの船に捕まってしまう。
しかし口がうまいシンドバッドは、口八丁手八丁でシリーンをまんまとエミールから奪い、改めてデリアバーへ向かう。船の乗組員で理髪師のメリクがデリアバーへの地図を暗記しており、一行はデリアバーに到着する。
しかしそのメリクは、実はシンドバッドの命を狙う謎の男ジャマールだった。
デリアバーに到着したシンドバッドは、首にかかったメダルを証拠に自分が正当な後継者であると嘘をつき、宝を手に入れようとするが、なんと本当にデリアバーの王子であったことが発覚する。
そしてジャマールやエミールとの争いにも打ち勝ち、財宝もシリーンも手に入れることができた。
という冒険譚を話し終わったシンドバッド。しかしやっぱり仲間たちは、いつものほら話だと笑って信じようとしない。シンドバッドはみなに財宝を分け与え、現れたシリーンと共に船に乗り込む。
そして仲間たちに「真実の幸福は財宝ではなく愛だよ、愛」と語り、シリーンと共に次の冒険へと旅立っていく。
映画『船乗りシンドバッド(1947)』の予告編
映画『船乗りシンドバッド(1947)』の感想
シンドバッドを題材にした映画は数あれど、今回の見どころはシンドバッドの陽キャぶり。一見の価値あり。やたらとカラフルなセットの中を縦横無尽に駆け回る。
シンドバッドを演ずるダグラス・フェアバンクス・Jr (Jrの方)が思いっきりカメラ目線で登場するや否や、両腕を大きく広げぶんぶん振り回し、体を左右に振りつつ、あっちへ移動しこっちへ移動して、躍動感のかたまり。
そして登場シーンだけでなく、最後の最後まで大げさで大味な動きで楽しませてくれる。人生楽しそう。
ミュージカルでもなんでもないのにまるで踊るかのよう。これは演技とかじゃなくて、「こういうもん」「こういう様式美」と捉えていいと思う。
そしてにやけた二枚目ぶり。
シリーンを口説くときに、歯の浮いたセリフを何度も口から吐きまくっていたけれど、喋っていることに内容がないから何を言ってるのか理解できなかった。覚えられない。
何か喋ってるんだけど、どういうわけか右から左へするっと抜けてしまう。たぶん大したことを言っていないからだけど。
そのシリーンを演じたのは、モーリン・オハラで美人。
金持ちのお宅に生まれたけど、なんと7女(!)ということで、恩恵が自分まで降りてこなくて、仕方なく土地の大金持ちの妾になって他の女どもと主人の寵愛を競っているという不遇な立場。
それで「金金金金、とにかく金」みたいになってしまっていて、なかなかがめつい。でも最後はシンドバッドと真実の愛に目覚める。
モーリン・オハラは代表作の『ノートルダムのせむし男(1939)』を見てるけど、8年も経ってるせいか、ちょっとゴツくなられました? もう少し華奢な印象だったんだけど。
ちなみに首長エミールをやったのは、1956年制作のフランス映画版『ノートルダムのせむし男』でカジモドを演じたアンソニー・クイン。
そんな豪華メンバーの中、個人的に一番注目したのは、悪役ジャマール(メリク)のお姿。もう完全に新スタートレックのウォーフなの。
さすがにおでこはゴツゴツしていないけど、ヒゲといい、おでこの禿げあがり方といい(広いだけかな?)、ゴツゴツ以外はまるっきりクリンゴン人。
そのウォーフ、じゃなかったジャマールが、悪役なのにやたらと可愛らしい。まずは自分の髪の毛でちっちゃいちっちゃい三つ編みを編みながら登場。
そして終始「おネエ」っぽい動き。指の動きとか、首の動きとか、表情とか、全体的に「乙女感」が漂ってる。
それにやたらとピンクだった。ピンクが好きなんだと思う。このキャラ、かなり気に入った。
千夜一夜物語のシンドバッドは何度も映画化されているけれど、今作の情報が日本では手に入りにくいところを見ると、割と軽く扱われているのかもしれない(実際コケたらしいし)。
でもシンドバッド役はダグラス・フェアバンクス・Jr (Jrの方)だし、ヒロインはモーリン・オハラ、敵役がアンソニー・クインなんだから、当時のいわゆるスター映画なのだろうと思うのよ。
見る価値あると思うなあ。