映画『毒薬と老嬢』のデータ
題名 毒薬と老嬢 (Arsenic and Old Lace)
監督 フランク・キャプラ
出演 ケリー・グラント、プリシラ・レイン、ジョセフィン・ハル、ジーン・アデーア
上映時間 118分
制作年 1944年
制作国 アメリカ
映画『毒薬と老嬢』のあらすじ
超有名演劇評論家のブルースターは、結婚嫌いでも超有名。結婚を目の敵にした著作物をいくつも出版してきたが、ついに叔母の家の隣に住む女の子と恋に落ち、結婚を決意する。
実はブルースターの結婚嫌いの理由は、自分に呪われた家系の血が流れているからだった。実際兄のテディは自分をルーズベルト大統領だと思い込んでいるし、もう一人の兄ジョナサンは行方不明だ。
それでも新婚旅行に行く前に、育ての親である二人の叔母さんに会いに行く。すると二人は12人も殺して地下室に埋めていながら罪の意識が全くない、心優しい殺人鬼だった。
ブルースターはその秘密をなんとか隠ぺいしようと奮闘するが、そこへ行方知らずだった兄のジョナサンが、13人もの人を殺めた殺人鬼として舞い戻ってくる。
映画『毒薬と老嬢』の感想
一見常識的で善良で、実は殺人鬼の叔母さんたちが見もの。
11人だか12人だかを殺して地下に埋めているのに、全く罪の意識がない。二人は二人だけの倫理や愛を持っていて、それが一般常識とかけ離れているだなんて思いもしない。それどころか彼女たちは、殺した彼らを彼女たちのやり方で愛していて、とても大切にしている。
それに自分を大統領だと思い込んでいる頭のおかしな甥っ子をとても大切にしていて可愛がっていたり、近所の人たちや子供たちを愛していて、地元では評判のレディーたちなのだ。
特にふとっちょの方の叔母さんの歩き方や走り方が、肘を曲げた状態で両手をちょっと上げて、ちょこちょこと小走りに走る様が、実際は殺人鬼だと思うとそのアンバランスさがじわじわくる。
でも私のお目当ては、推しのピーター・ローレ。ピーター・ローレはまだ若い感じですごく痩せていた。今回のちょっとオドオドした気の弱そうなもぐりの整形外科医というのは合ってたと思う。
それからピーター・ローレが顔をいじくってフランケンシュタイン化してしまったジョナサン役が、やはり推しのレイモンド・マッセイだった。
彼も私から見ると ”芝居がクサい俳優” なのだけど、今回はそれが目立たなくって良かった(メーキャップのおかげかな?)。
話も面白いし、登場人物たちのちょっとした設定や行動が最後に生きてきて、ネタの伏線回収が見ごと。かなり良くできた脚本だと思う。
しかしいかんせんケリー・グラントが。ケリー・グラントが相変わらずケリー・グラントしていてもうバタバタ。
彼が出るとなぜこうなってしまうのか。
まあドタバタ・コメディが彼の真骨頂なのかもしれないけど、私はちょっと無理。お目めぱっちりの濃い顔に加えて、ずっと大声で叫んでいて、わざとらしい演技をこれでもかとダメ押ししてくる。見ていて頭が痛くなってきた。
なぜケリー・グラントを使うかなあ。日本人でケリー・グラント大好きっているのかなあ。
映画自体は面白いから、他の俳優だったらもっと良かったのに。傑作になり損ねた残念作。