映画『地球の危機(1961)』のデータ
題名 地球の危機(Voyage to The Bottom of The Sea)
監督・制作・脚本 アーウィン・アレン
出演 ウォルター・ピジョン、ジョーン・フォンテーン、ピーター・ローレ、フランキー・アヴァロン
上映時間 105分
制作年 1961年
制作国 アメリカ
映画『地球の危機(1961)』のあらすじ
ネルソン提督が自分で設計した人類初の原子力潜水艦「シービュー号」で北極海を航行していると、突然ヴァン・アレン帯が燃え始めて地球の温度が急激に上がり、人類滅亡の危機にさらされる。
ヴァン・アレン帯を消滅させるには核ミサイルを打ち込むしかないと判断したネルソン提督は、国連で意見を披露するが猛烈な反対にあう。しかしネルソン提督は周囲の反対なぞ気にも留めず、直ちに潜水艦「シービュー号」を発進。核を打ち込む最適な場所と時間を割り出し、そこへ向かう。
ところが乗組員たちの支持も得られず猛反発にあい、計画は難航し、命まで狙われるはめになるのだった。
映画『地球の危機(1961)』の予告編
映画『地球の危機(1961)』の感想
監督のアーウィン・アレンがこの映画を撮ったあと、セットをそのまま使いまわしてテレビドラマにした『原子力潜水艦シービュー号』がつとに有名。
その潜水艦「シービュー号」の造形は、例えば同じ潜水艦ものの有名作『海底二万哩(1954)』の「ノーチラス号」の非現実的な豪華極まりない潜水艦とは違って、実に現実的なデザイン。
ロマンあふれるノーチラス号と、リアルなシービュー号。どちらがお好みか、比べてみるのもオススメ。
海洋SF娯楽作としてはお約束の「ダイオウイカ」に襲われるシーンもある。おまけに最後は「巨大タコ」にも襲われる。
タコの方は、私的にはまさかのタイミングで、「こ、このタイミングで?」と軽く驚き、感心もした。
そして意外な真犯人。ははあ、あなたでしたか。「真犯人は一体!」という作品ではないので、「誰が提督を殺そうとしたんだろう」とかそういう目線で見ていなかったので結構意外だった。
この映画の魅力を引っ張っているのは、主人公ネルソン提督の人物像。
これがかなり強引で、頑固で全く聞く耳を持たず、自分が信じる道を突き進む猪突猛進。今風に言えばブラック上司。でも彼がシービュー号の一番偉い提督だから誰も逆らえない。
最初から最後まで味方なのはエメリー准将と秘書のキャシーくらいで、シービュー号の艦長とはかなり早い段階から対立してしまうし、お客として乗っていた精神分析医のスーザン・ヒラー博士ともウマが合わない。
徐々に対立が深まって、信頼関係がみるみる崩れていく。
だけどネルソン提督は全く動じることが無い。しかるべき時にしかるべき角度で核ミサイルを打ち込めば、ヴァン・アレン帯は消滅し、全人類は助かるという確信を持つ、信念の男なのだ。
実際どのように人類が危機的状況にさらされているかと言えば、ヴァン・アレン帯が燃え始めて50時間で、地球の気温は57度にまで上昇し、南極や北極の氷も解け始め、地上は炎と水害、疫病、濃霧などに襲われ大混乱。このままいけば気温は70度を超えて、人類は滅亡するだろう、という壊滅的状況。
そしてこのように人類全体が危機的状況に襲われているというのに、国連での対策会議に参加した世界中の学者たちの意見は「静観して、ヴァン・アレン帯が自然に鎮静するのを待つ」という「何もしない」という選択。
その中で、積極的に動いて人類を救おうと、具体的な対策を打ち出せている人物はネルソン提督ただひとり。
でも、提督は「自分の理論を確信している」し、その方法である「核ミサイル」も持っている。それを発射できる「原子力潜水艦」もある。
つまり「誰の助けがなくても、自前で実行できてしまう」強い立場。
頭脳も肉体もある状況だから、理解されなくても「正しい」という確信があればやるしかないのだ。
いけ!ネルソン提督! 男なら世界中を敵に回しても信念を貫き、人類を救え!
ところがネルソン提督がちょっと強引過ぎて、シービュー号の乗組員は一枚岩になれずに様々なトラブルを抱えてしまう。
まず、シービュー号の艦長が、とても全人類を救うとかいう器もスケールもない「善人かつ常識人」でネルソン提督と意見が合わない。
例えば北極の氷上で男をひとり救出するが、他にも仲間がいるらしいと知った艦長は「人命第一」とばかりに捜索隊を出そうとする。
それを止めるネルソン提督。目先のひとりふたりを救っていたら、全人類を救う時間が無くなる、というわけで、生きているかも分からない仲間など見捨ててしまう。
で、常識人の艦長ご立腹。
こういった意見の食い違いが度重なり、艦長はネルソン提督の精神状態がまともではないのではないかと疑い始める。
またそういった艦長をたきつけるかのように、遊びに来ていただけの精神分析医スーザン・ヒラー博士が、「ネルソン提督はおかしい」と言って艦長に味方する。
さらに頭が痛いのが、くだんの氷上で拾った男。こいつが犬なんか抱えて、神がかっちゃって、
「滅亡は神のおぼしめしである」「家族は皆、天に召されたかもしれない。でもこれが神の意志なのであれば従おう、家族とは天国で会おう」
とかなんとか言い出して、クルーの士気がだだ下がり。
こういうキャラはアメリカ映画とかだと時々出てくるけど(『ミスト(2007)』とか)、やだね、こういう人。なんの解決にもならないことを言い出して、前向きに現実的に解決しようとする人の邪魔をするの。
他にもネルソン提督への脅迫とか、放火、乗組員の叛乱、国連が派遣した潜水艦の追跡など、つぎつぎと問題が起こって、ネルソン提督は厳しい状況に追い詰められていく。
そんな風に色々なことがあって、それらを乗り越えたうえで人類が救われたというのに、映画のラストは実にあっさりとしたハッピー・エンド。
「あ、終わり?」って感じで、私は好き。
【関連記事】