ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

地球最後の日(1951)

 

 

題名 地球最後の日 (When Worlds Collide)
監督 ルドルフ・マテ
制作 ジョージ・パル
出演 リチャード・デア、バーバラ・ラッシュ、ヘイドン・ローク、ジョン・ホイト
上映時間 83分
制作年 1951年
制作国 アメリカ

 

 

ノアの箱舟の現代版。

 

 

地球に「ベルス」と「ザイラ」という2つの惑星が接近して人類が滅亡の危機を迎える。それを予測した博士が、接近する地球型の惑星ザイラの方に移住する計画を立てるが誰も本気にしない。残された時間はわずか8か月。博士は仕方なく、性格の腐った車椅子の富豪の財力を借りてロケットの制作を開始する。性格の腐った車椅子の富豪は自分の権利ばかりを強硬に主張する。

いよいよ「ザイラ」が接近し、世界中の人々も危機に気付くがもう手遅れ。地球は水没する。博士一行は急ピッチで地球脱出の準備を進めるが、性格の腐った車椅子の富豪は相変わらず自分の事しか考えていなかった。

とうとう脱出の時がせまる。しかしロケットに乗れるのは40人。作業員は600人。くじ引きで搭乗員を決めるが、作業員たちの叛乱が起こる。

 

 

予想より面白かった。でも、ちょっとよく分からないところがあるのも事実。

最初にザイラが近づいてきて地球に壊滅的な災害をもたらす。その後、ベルスが地球に衝突して、地球はこっぱみじんになる。なのでザイラが去った後の、ベルスが地球にぶつかるまでの間に、ロケットでザイラに引っ越そうという計画らしい。

接近してくる惑星の方に引っ越すという発想が斬新。

確かに、ベルスと地球が衝突して地球がなくなってしまうのだから、選択肢としては火星とかに引っ越すか、ぶつからないザイラに引っ越すしかない。

 

しかしそのままザイラがハレー彗星のように太陽から離れていくとは考えづらい。極寒の惑星になって凍死してしまう。そんな計画をヘンドロン博士が立てるはずがない。

なので私は、ベルスと地球がぶつかって木っ端みじんになったあとの空いた軌道に、そのまま “すぽん” とザイラが収まる算段と理解した。そして太陽の周りをまわる。

うーむ、それはそれでうまくいくだろうか。だって2つの惑星分の破片があるし、ザイラもあるから、質量が3倍になって太陽系の重力バランスが崩れそうな気がする。

 

いずれにしても人類が生き延びられる気がしない。

でも映画では上手くいったみたいで、植物こそ地球とは少し違う感じだったけど、空気もあって、青空が広がっていてかなりいい感じ。それにラストシーンでは左手に、なにやら人工の建物みたいなものがあった。

続編の臭いがする(なさそうだけど)。

 

この作品は今一つ評判が良くなかったようだけど、私の大好き『スタートレックⅡ カーンの逆襲(1982)』では、洞窟の中のコンテナに「ベルス」「ザイラ」と書いてあったらしいし、

『ディープ・インパクト(1998)』 は、そもそも今作をリメイクしようとして企画されたものらしいから、それなりに影響力があったのだと思われる。

実際、特撮技術や科学的知識こそ50年代っぽいけれど、脚本も面白いし、登場人物たちのキャラクターもベタながら魅力的。善人は善人らしく、悪人は悪人らしく、徹底して分かりやすいのが良かった。こういう映画は難しくしてもね。

 

設定や登場人物たちがどのようにベタかというと、

主人公のランドールは “パイロット” でちょっとチャラ目の女好き。でもヒロインのジョイスに対しては本気で好きになって真剣になり、自分にはロケットに乗って生き残る資格があるのか悩んで辞退しようとする正義漢でもあるという、「一見チャラい、でも実はいいヤツ」というあるあるな設定。

医者のドレイク博士は、婚約までしていたジョイスをランドールに取られてしまったにもかかわらず、彼女がランドールの事を好きだと気付けば一役買って、二人をくっつけるようなナイスガイ。立派すぎ。聖人君主。ラストの方ではランドールと仲良くなりそうな気配すらあった。

ヘンドロン博士も、いたって常識的な科学者で、本性が出たりはせず、最後まで分別のある善人を貫いていた。

 

逆にロケットの資金を出す大金持ちのスタントンはクソ野郎で、人類の未来どころか、人を人とも思っていない、みごとなジコチューだった。障害があるらしく車椅子に乗っているのだが、そんな彼を世話してくれる付き人を奴隷のように扱い、自分の命以外は価値がないと言わんばかり。一人じゃ生きていけないくせに・・・

・・・でも・・・私は、どんなに性格が悪くても、たとえ差別主義者であったとしても、自分の力で生涯をかけて稼いだお金を出すのだから、乗る権利はあると思った。

本人が分別を働かせて「自分は人類の未来に役立てるとは思えないので辞退します。でもお金は出します。」と、自分から言い出すのであれば “立派な人” だけど、そうでないなら周りがとやかく言えることではないと思う。

それを、「人類の未来のためにお金を出してね、でもあなたはもう若くないし、車椅子で障害もあるから乗らないでね、でもお金は出してね」と言うのはあまりにも勝手。

自分で聖人君主になるのは勝手だけど、他人に聖人君主であることを要求するなんて、それはそれで傲慢だし、身勝手だよ。その金がなければロケットは出来ないのだから、金と本人はセットです。

 

・・・とはいえ人類が滅びるかの瀬戸際なので、心を鬼にして引きずりおろさなくちゃいけない気もしてきた。うぬぬ。

 

ところでプロデューサーが、『宇宙戦争(1953)』『タイムマシン(1960)』などのジョージ・パルだった。

そしてTV放映時の主人公ランドールの吹替が広川太一郎だったらしい。

まじか。いいなあ、いいなあ。見たいなあ。DVDに入れて欲しかったなあ。映画の印象がかなり変わりそう。もしかするとコメディ化して、別作品になってた可能性まである。

 

 

地球最後の日(字幕版)

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