映画『料理長(シェフ)殿、ご用心』のデータ
題名 料理長(シェフ)殿、ご用心(Who Is Killing the Great Chefs of Europe?)
監督 テッド・コッチェフ
出演 ジョージ・シーガル、ジャクリーン・ビセット、ロバート・モーリー、ジャン・ピエール・カッセル、フィリップ・ノワレ
音楽 ヘンリー・マンシーニ
上映時間 112分
制作年 1978年
制作国 アメリカ、イタリア、フランス、西ドイツ
映画『料理長(シェフ)殿、ご用心』のあらすじ
美食家で料理評論家のヴァンダヴィアさんが、「世界最高の料理」として4人のシェフとその得意料理を選んで雑誌で発表する。
するとそのシェフたちが、雑誌の掲載順に、彼らの得意料理と同じ調理方法で殺害されていく。
犯人は一体だれか?そしてその動機とは?
映画『料理長(シェフ)殿、ご用心』の予告編
映画『料理長(シェフ)殿、ご用心』の感想
有名シェフが次々と、自分の得意料理と同じ殺され方をして、その犯人はいったい誰なのかというストーリー。でもサスペンス要素はまるでなくて、これはおバカ・コメディ映画なのだ。
推理小説的な謎解きよりも、登場人物たちのすっとぼけた味わいや、ちりばめられるブラック・ユーモア、ジャクリーン・ビセットのファッション、ヨーロッパの街並み、美しくて豪華な料理などを楽しむタイプの映画。殺され方はかなりエグイけど。
個人的最大の見どころはジャクリーン・ビセットの美しさ。彼女が出ているから見るんであって、彼女が出ていなければ私は見ない。
今回の役どころはデザート担当のパティシエ、ナターシャ役。美人だけど親しみやすく、チャーミングで豊かな表情、女性らしくて色っぽくて、そのうえ知的な感じもする。無敵。
動物愛護的な人じゃない人にとって、今作のジャクリーンのファッションは注目。今は亡き「毛皮」を着ている。70年代の粗いフィルムでもハッキリわかる上等な毛皮ベストの裾に、キツネのしっぽが何本もぶら下がっていて、大変良く似合っていて格好いい。おしゃれ。
でも近年の繊細な人たちがこの毛皮を見たら、ショックで卒倒するかもね。
このジャクリーン・ビセットが別れた旦那役はジョージ・シーガル。
今回のシーガルは、私の好きな『さらばベルリンの灯(1966)』での抑えた渋い演技とは打って変わって、表情や身振り手振りも大げさな、典型的アメリカ人風味が炸裂。大味。お得意の「ニカッ」って「笑っている口の形」にするわざとらしい笑顔を連発させている。
私は『ロシュフォールの恋人たち(1967)』でのジーン・ケリーを思い出した(あれと比べちゃシーガルが可哀そうか)。
そして映画冒頭から菜食主義者をこき下ろすところから始まって、全編ブラック・ジョークが炸裂。
世界一の認定を受けたシェフが殺されていくという恐怖の中で、この映画のシェフ達は「自分が狙われたらどうしよう」と心配したりは全然せず、「次は自分に違いない」みたいな自信過剰な男ばっかり。
その上で「次は俺だ!」「いーや俺だ!」とみんなが被害者になりたがるというね。
被害者ポジションの奪い合い。シェフのプライドを賭けて、命を失ってでもフランス一のシェフとして死にたい、というわけ。あほばっかりなのよ。
そんな連中のうち、一人目の犠牲者で、オーブンでこんがりと焼かれてしまったシェフ、ルイの捜査での刑事とナターシャの会話が好き。
刑事A「(犯人の)心当たりは? たとえばルイの部下のコックとか?」
ナターシャ「まさか。肉を焦がすコックがいます?」
これ好き。