ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

アトミック・カフェ(1982)

 

 

題名 アトミック・カフェ (The Atomic Cafe)
監督 ケヴィン・ラファティ、ジェーン・ローダー、ピアース・ラファティ
上映時間 87分
制作年 1982年
制作国 アメリカ

 

 

あのマイケル・ムーアが手本にしたことでも有名な、相当必見の異色反戦ドキュメンタリー映画。

 

映画の為に撮影されたフィルムが一切なく、

過去に上映されたニュース映画とか、普通にテレビ放映されたニュース映像とか、行政が国民に見せる教育映像とか、国家が軍人に対して見せる教育フィルムとか、ラジオ音声など、

記録映像を集めに集めて編集しただけという斬新な手法。

 

説明的なナレーションもなく、世の中に発表された映像や音楽を取捨選択して編集し、時系列に並べただけ。

でも、説明が全くないにも拘らず、その数々の映像を見ていると、反戦的であるだけでなく、政府というものがいかに信頼できないか、どのように国民を欺くのかが良く分かる作品でもある。

 

当時の政府やマスコミは、原爆や放射能について大衆に知らせる時、真実を伝える気が全くない。ごまかしている。

放射能は安全ではない、だけど恐れるほどでもない。放射能は体の穴から入ってくるから、口や目や耳を塞いでいれば大丈夫。髪の毛が一時的に抜けるかもしれないけど、すぐ生えて元に戻る。核シェルターはあった方がいいけれど、少し時間が経てばすぐに外で普段通りの生活ができる。放射能がまるで食品添加物テードのノリ。

核爆弾発射、シェルターに避難、ドーン、ジグソーパズルで遊ぶ、さあ地上に出よう、僕たち家族だけでラッキー、みたいな。

 

大衆相手だけじゃない。

軍が、所属している下っ端兵士に見せる教育映像でも嘘八百を並べ立て、「放射能?目に見えないし、全然大したことないよ」とか「目と鼻と耳を塞いでおけば放射能は入ってこないから大丈夫」とか、そういう風に胡麻化して作戦に従事させる様子もふんだんに描かれている。

ネヴァダ州での核実験かな? 10km離れてるのか20km離れてるのか知らないが、自国兵士に塹壕を掘らせてそこに立たせ、目の前で核爆弾を破裂させ、ブタと一緒に被爆させるというね、、、恐ろしい。名もなき一兵士なんて、家畜と一緒。

 

権力者たちがいかに私たち国民をごまかしてきたか。

敗者の日本も戦果を捏造して国民を犠牲にしたわけだけど、勝者のアメリカも同じく自国民を欺いて犠牲にしていたわけだ。

なんか最近も似たようなことが起こっていたような気がする。

 

しかし、、、日本人としては「出来たので落としてみました」とか「原爆投下はルーチンワークで面白味はありませんでした」とか、

打ち込んだ後も「原爆ありがとう!」「また落としちゃえばいいんだよ~」みたいな軽い感じで言われたんじゃ、苦笑いするしかない。

人の命をなんだと思ってるのかしら。これはアジア人差別なのかしら。ドイツがまだ降伏していなかったらドイツにも落としていたのかしら、などと色々頭をよぎる。

 

さらに流れる音楽が輪をかけてすごい。こちらも映画の為に作られた音楽ではなく、すべて当時発売された既出の商業音楽なのだが、

映像だけであれば、もしかするとかなりシリアスな作品なのかもしれないのに、流れるポップミュージックの「原子爆弾+ポップ」「放射能+ロック」「放射能+カントリー」などの組み合わせのアンバランスさからくる破壊力がすごい。

歌詞の一例がこんな感じ。

 

「せっせと稼いでも 全部 税金と請求書に消える

おれの悩みの解決法を見つけたんだってな 

やった やった 水素爆弾だ 

えーい 落としちまえ

やった やった 水素爆弾だ 

神さま おれだけは助けて」

 

「昨夜も夜 夢を見た 水素爆弾の夢だ

爆発して おれは捕まった 地上に男は俺一人

町に女は13人 男は俺一人

女13人に 男は俺一人

なんだか変な気分だな

町でたった一人の男が俺だなんて

13人の女が男の俺に群がる」

 

「ドーン!

僕の中でなにか爆発した 涙があふれ出る

ああ妙な気分

これはきっと原子爆弾の恋」

 

ポップだわ。ファンキーだわ。さすが世界のエンタメを一手に引き受けるアメリカだけのことはある。なんでもエンタメ。

人の命と尊厳を根こそぎ奪い去る原子爆弾を、ここまで軽く扱えるなんて並大抵じゃない。日本人には及びもつかない不謹慎さ。

 

でも嫌いじゃない。

この根っから明るいノーテンキなPOPさの虜になってしまったのが、戦後の私たち日本人なんだから。

もちろん例外ではない私は、そのやたらとポップでファンキーなサントラCDが欲しいんだけれど、どうしても見つけられない。import も全滅。LPでもいいくらいなんだけど、、、海外ダウンロード・サイトはあるけど怖いし。

極めて残念。