題名 スーパーマンⅡ 冒険編(Superman II)
監督 リチャード・レスター
原案・脚本 マリオ・プーゾほか
出演 クリストファー・リーヴ、ジーン・ハックマン、テレンス・トランプ、マーゴット・キダー
音楽 ジョン・ウィリアムズ(テーマ曲)
上映時間 127分
制作年 1980年
制作国 アメリカ
今作を一言で言うと、ネタが盛りだくさんの楽しい展開。
まず映画冒頭に、第一作目のおさらい的な映像がオープニング・クレジット中に流れるという親切設計。「あー、そうそう、そうだった」と思いだせる、観客に優しいオープニング。私のような記憶喪失者にはありがたい。
そして始まるパート2の見所は、クラーク・ケントが自分をスーパーならしめている能力を「ボクは愛に生きる!」と言って意外とあっさり放棄して、母ちゃんを「え、あなたマジで? 困惑~」みたいに驚かせていたことと、そのお相手ロイス・レインとラブラブしちゃうところ。
さらにコミック版で見られる(らしい)様々な、漫画ならではのスーパー能力も披露してくれる。
その上、宿敵レックス・ルーサーのみならず、前作で追放されていたゾッド将軍までもがお目見えするし、クラークが大勢いる街中で「ガバア!」と服を脱いでしまうシーンも見られて、スーパーマン・ファンならかなり楽しめる。
しかしそれにしても驚いたのは、クラーク・ケントが割とライト感覚でスーパーマンをやっていたことが発覚する事。
あまりにもあっさりと、ロイスに「うん、そうなんだ。ずっと黙ってたけど、実はね」的に自分がスーパーマンであることを告白し、北極の秘密基地にまで連れて行き、散々イチャイチャしたあげくに、迷うことなく「ぼく一般人になってロイスと幸せになります!」と母親に告げていた。その軽さは「アイドル歌手かよ!」とこっちがキョドるほど。
え、え、い、いいの? なんかすごく簡単に決めちゃってるような気がするけど大丈夫?
だって地球は? なんか随分親身になって人類の平和の為に頑張ってくれてたと思ってたけど、そんなにあっさりやめちゃうの? あ、いや、いいよ、いいのよ、OKよ。幸福を追求する権利は万人にあるんだから。でもさ、なんかすごく自主的に、しかも熱心にやってくれてたみたいに思ってたから、わたし勝手に期待しちゃってた。
いや、決めたんならいいのよ、私もともとウルトラマンよりゴレンジャー派だから。ほらウルトラマンって宇宙人でしょう。なんかひっかかってたの。地球の事なのにさ、宇宙人に守ってもらうって、他力本願過ぎる気がして。その点ゴレンジャーは地球人だから。
だから内心、クリプトン星人に「正義よろしく」なんて丸投げするの良くないなってちょっと思ってたから、私の方は大丈夫。
それより心配だよー。これから普通の人になって生きていって、近所で強盗とかあって誰かが困ってても罪悪感とか湧かない? 「ああボクが個人的な愛を優先したばっかりに・・・ごめんなさい!」みたいな気持ちになって精神を病まない? 大丈夫?
宿命からは逃げられないんじゃないかなって思うんだけど・・・。なんか心配だなあ。
・・・と思ってたら割とすぐ考え直したみたいで、あっという間に元に戻ってた。親の期待をも裏切る一大決断だった割には意外とすぐ変節するのね。臨機応変というか融通が利くというか、柔軟性が高い。
そうそう、そういえばクラークのお父さまジョー=エルのお姿がなかったけれど、どうしちゃったのかしら。
スーパーマンが北極の基地にロイスを連れて行って、今後の方針みたいなことをホログラム映像に相談したとき、なぜか父ちゃんではなく、母ちゃんが出てきていた。
第一作目ではあんなに圧のある「どアップの連続」で存在感ありまくりだった父ちゃんが、今回は「嫁に任せる」みたいになってたのはどういう心境の変化だろう。教育方針が変わったのかしら。まさか・・・中身の人が飽きちゃったとか? (マーロン・ブランドだし)
でもまあそのおかげでスーパーマンも再度思い直してくれたのかもしれない。
だって「やっぱり気が変わりましたあ!スーパーマン続けます!」とか言って基地に戻って行って速攻で元通りになったところを見ると、ママは許してくれたんだよね。よかったよー、やさしいママで。これがもしパパだったら・・・ああ怖い。
「バカモン!! お前はクリプトンの最後の生き残りなんだぞ! 地球人になりまーす、やっぱりクリプトン人続けまーす、などとコロコロとそんな軽いものではないわ!」とか言って怒られて、シリーズが終わってたかも。
そう考えればこれで良かったのかもしれないな。
しかしレックス・ルーサーは今回もバカだった。
今回は超人的な悪役ゾッド将軍が出てきたおかげで(前回も出てたけど)、レックスは割と脇役に。でも相変わらずいい味出してた。
今回もまだ西海岸に固執していた(笑) でも今度はアメリカ西海岸ではなく、オーストラリア大陸を丸ごといただこうとしていたところを見ると、どうしても海岸地帯が欲しいらしい。スキューバ・ダイビングでもしたいのかしら。そういえば前作では地下の秘密基地に大きなプールを作って泳いでたっけ。マリン・スポーツが趣味なのかな。
相も変わらずおバカで、さらにおバカな部下オーティスとの掛け合いがとても楽しい。緊迫した状況で、「ふっ」と気を抜くすっとぼけた振る舞いはコメディの基本。今回も笑わせてくれました。
ジーン・ハックマンに限らないけど、演技がうまい俳優ってすごいと思う。怖い役をやればものすごく怖い演技をするのに、今回の役みたいな「世界征服を目論むような悪役だから怖くてもいいのに全然怖くない役」も上手い。ちゃんと悪役に見えるのにぜんぜん怖くない演技というのをちゃんとやってる。才能があるってすごい。
蛇足的に、コミック版に出て来るらしい、数々のスーパー能力について。
少し調べたところによると、昔のコミック版では他にも、超高速で計測や計算を行う「スーパー数学」や、即席でウェディング・ドレスを織る「スーパー機織り(はたおり)」、手から小さいスーパーマンを出す「タイニースーパーマン」といった技もあったらしい。
実に興味深い。ネーミングもすてき。
今作ではその中から、キスで相手の記憶を消す「スーパー健忘キス」と、胸のSのシンボルマークを投げて敵を捕縛する「スーパーセロファン」が見られる。