ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

スーパーマン(1978)

 

 

題名 スーパーマン(ディレクターズ・カット版)(Superman)
監督 リチャード・ドナー
出演 クリストファー・リーヴ、マーロン・ブランド、ジーン・ハックマン、マーゴット・キダー
音楽 ジョン・ウィリアムズ
上映時間 154分
制作年 1978年
制作国 アメリカ

 

 

アメコミ好きでもなく、クリストファー・リーヴが好きなわけでもない。

コスチュームは正直微妙だと思うし、このシリーズのロイス・レイン嫌いだし。ぎすぎすと骨ばってシワっぽくて可愛くないし、ぎゃーぎゃー騒いでうるさいし。

それなのにスーパーマンはなにか気になって、数年ごとになんとなく見直してしまうし、新作が公開されると「見たい」と思う。あのスーパーマンのロゴを見ると胸が少しだけ熱くなる。

スーパーマンが虚空を飛んでいる姿を見ると、やっぱり胸が熱くなる。

私にはスーパーマンへの微かな愛がある。それはなぜか。

 

それは、クラーク・ケントのキャラ設定と、スーパーマンの孤独を愛しているから。

黒縁メガネにダサい髪型とネクタイ、カバンを脇にしっかり抱えてオクテな感じ。

眼鏡なんて伊達メガネに決まってる。だって彼はスーパーマンで、視力うんぬんのレベルではなく、透視が出来るようなスーパーな能力者。近眼だなんてありえない(笑)

あざとい。でも、そこがいい。

 

そんな私の好きなクラーク・ケントは、ずり落ちるメガネを指でちょいちょい上げながら、ダメ男を演じている。そしてたいてい夜になるとスーパーマンになって空をパトロールして、地球の平和を守っている。

だけど宇宙で一番孤独な男。こんなに孤独な男もそうはいない。

生まれ故郷であるクリプトン星は爆発してしまって、もうこの世にはない。両親はおろか、同じクリプトン星人はもう自分以外誰もいない。宇宙でたったひとり(例外あり)。

地球人との能力差は歴然としていて、能力をひけらかせばロクなことにはならないから黙っているしかない。自分の抱える苦悩を理解してくれる人は誰一人いない。一応育ての母親がいるけど普通の地球人だから、同じ悩みを共有できるわけではない。ひとりぼっちの、悲しい青春。

それなのに、北極にデータとして保管されているクリプトン人の実父ジョー=エルは「地球人のために生きろ!」とか訳わからんことを言ってくる。まあ地球で生きるしかないし、地球人には世話になるしかないから地球の平和の為に生きることにするけど、「ぼく、ヒーローなんです!」って名乗りを上げることはジョー=エルに止められちゃう。

理由は「そんなことをしたら24時間365日、地球の為に働かされる」から。

まあね ”神様並み” ですからね。十戒に「神の名をみだりに唱えてはならない」というものがあるけれど、全員がむやみやたらと「神様お願い」「神様助けて」って言いだしたら、いくら神でも手が回らないしキリがない。だからあらかじめ「気安く呼んじゃだめだよ」って釘を刺しておく。「お願いする前にまずは自分で努力してね」と。

でもカル=エル(クラーク・ケントのクリプトン名)は神様ではないから戒律を授けたりはできない。だから自分の生活を確保する為に、スーパーマンとしての生活と、名もなき地球人クラーク・ケントとしてのプライベートな時間はきっちり分けて、両者は別人として活動するというわけ。

だからどんなに活躍して地球人の平和を守っても、クラークは誰からも感謝されない。スーパーマンとは別人だから。

愛する女性にすら真実を告げる事ができず、嘘をつき続けなければならないクラーク。

それなのにクラークは腐ること無く、健気にも昼夜を問わず人々を助けて、そして真夜中にたったひとり、宇宙空間を飛び回るの。

なんて孤独なんだろう。

 

そしてこんなに悲しい話なのに、映画からはそういう孤独感はほとんど感じられないところも好き。

クリストファー・リーヴ演ずるスーパーマンは、高校生くらいの時は不満を持っていそうだったから、そのままグレれば陰のあるスーパー・ヒーローになる可能性も残していたけれど、

北極で修行してからは大人になって丸くなりあそばしたのか、そういった葛藤とはすっかり無縁のお方になった様子。

なんの疑問も矛盾も葛藤も感じられない、明るく屈託のない物わかりの良さを発揮して、清々しく空を飛ぶ。地球人を守り抜くのだという責任感すら持っていそう。

なんでや。

きっとそれを可能にするのが、ロイス・レインの存在なんだろう。愛するロイスのためなら、地球人ごと彼女を守っちゃおう、みたいな。もう丸ごと面倒見ちゃいますよと。

だけどクラークは、スーパーマンに恋するロイスをすぐ隣で見ていながら、「僕がスーパーマンなんだよ」と告白することすらできないのだ。

 

かなしい。いいのかそれで。ニコニコしながら「気持ちいいなあ〜」って大空を飛んでいる場合なのか君は。

だいたい考えてもみたまえ。いま君がやっているスーパーマン家業の在り方は、かなり虚しくはないか?

あちらで泥棒がでたとなれば飛んでいって泥棒を捕まえ、こちらで飛行機が故障したとなれば飛んでいって飛行機を支え、どこぞで誰かが命を危険にさらされているとなれば飛んでいって命を救ってって、そんな対症療法ばかりをしていたら永遠にエンドレスだぞ。

そのやり方では本当の意味で地球人を救うことはできないぞ! 毎日が忙しいだけで一生が終わるぞ!

クラークは、天才的おバカなレックス・ルーサーに「体よりも頭だよ。ぷぷっ」って笑われてしまっていたが、レックスの言う通りだぞ。 頭もいいはずなんだから、もっと抜本的な解決に乗り出さなきゃ。

 

ところでもちろん宿敵レックス・ルーサーも好き。演ずるのは名優ジーン・ハックマン。

レックス・ルーサーは、どういうわけか分からないけど地下60メートルに巨大な秘密基地を持っていて、そこから世界征服みたいなことを狙っている。

その計画が、カリフォルニアを丸ごと沈めてしまおうというの。

カリフォルニアにはサンアンドレアス断層が走っている。その断層より西側の、なんの価値もない砂漠地帯の土地を丸ごと買い占めたと。そしてその断層に上手に500メガトンの爆弾を打ち込めば、海側のロサンゼルスもサンフランシスコも大都市は全部沈むから、海岸線が移動して自分が買い占めた砂漠地帯が海岸線になる。するとなんとびっくり沈んだ都市の代わりにその砂漠地帯が発展するから、自分は大儲けできる、という算段。

天才的おバカ(笑)

このように、アメリカのアメコミ・ヒーローの悪役はどういうわけかおバカが多くて、それは心底素晴らしいことだと思うのよ。