ぱっとみ映画感想ブログ

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ソイレント・グリーン(1973)

 

 

 

 

 

映画『ソイレント・グリーン(1973)』のデータ

題名 ソイレント・グリーン (Soylent Green)
監督 リチャード・フライシャー
原作 ハリイ・ハリスン 『人間がいっぱい』 1966
出演 チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン、ジョゼフ・コットン
上映時間 97分
制作年 1973年
制作国 アメリカ

 

 

映画『ソイレント・グリーン(1973)』のあらすじ

人類の環境汚染による地球温暖化と人口爆発によって、4000万人がひしめき合う2022年のNY。食料も水も圧倒的に不足し、政府が配給するクラッカー状の合成食品「ソイレント・レッド」と「ソイレント・イエロー」に頼って暮らしていた。そして新たに、海底プランクトンで作った動物性の合成食品「ソイレント・グリーン」が配給されはじめる。

殺人課の刑事ソーンは、“ブック(本)”と呼ばれる老人ソルの協力を得て凶悪犯を追う。ある日、高級マンションに暮らす弁護士サイモンソンが殺され、プロの仕事だと見抜いたソーンはソルと共に捜査に乗り出す。その結果辿り着いた真相は、全人類を脅かす驚愕の事実だった。

 

 

映画『ソイレント・グリーン(1973)』の予告編

www.youtube.com

 

 

映画『ソイレント・グリーン(1973)』の感想

 

引用: 「俺がガキの頃は味があった」 ソルのセリフ

 

特撮のないSF映画の大傑作。大好きな映画。主役は大スター、チャールトン・ヘストン。

 

これは別に悪口ではないのだが、なんかチャールトン・ヘストンって風呂に入ってない感じがする。『ベン・ハー』でしょ、『猿の惑星(1968)』でしょ、数日入っていないとかじゃなくて、ずーっと風呂に入っていない感じがする。だからこの映画もはまり役。

しかしなあ、チャールトン・ヘストンは『猿の惑星』に続き、また真実を知ってしまったのか。さすが大スターは知る真実の重さと大きさが違う。

 

映画の内容はそれこそ ”人間がいっぱい”。

主人公のソーンが住むアパートの階段部分は、まるでベトナムからのボートピープルなみに人がひしめき、足の踏み場もない。

爆発的に増えた大衆を支える唯一の食糧と言ってよさそうな食べ物「ソイレント」は、ソイレント社が作っているプレート状の食品。

自然の本物の食べ物は激レアになり、特権階級の人間に独占され、庶民が口にするには法外な金額を払うか、違法に手に入れるしかない。

 

警察という立場を生かしていい感じに職権を乱用するソーンは、特権階級のサイモンソンのところからわずかばかりの本物のレタス、本物のリンゴ、本物のセロリ、本物の牛肉を持ち帰る。それ見て感激ひとしおのソル。

そしてソルは腕を奮って、本物の料理をソーンに振る舞う。たいした料理じゃない。でもその時、いつも使っているプラスチックのナイフとフォークではなく、大切に箱にしまってあった本物のナイフとフォークを出してきてそれをソーンに使わせるあたり、深い愛情を感じるいいシーンだった。ソルにとってのソーンは、慈しむ “息子” であり、育てたい “未来” なのだ。

そして二人でレタスと林檎と牛肉のシチューを食べる。私はいつもここで目がうるんでくる。

 

この映画の時代設定は2022年。失われているのは本物の食べ物だけじゃない。

この世界ではもはや本は作られておらず、大衆の間ではほとんど知性が崩壊している様子。本が読めるのはごく一部の人間のみ。

ソルは本を読み、理解できる数少ない一人だ。ソーンも十分知的だと思うが、知性が野生のソーンにとって、ソルはアカデミックな知性を担当するかけがえのない存在。

ソーンが出先から持ち帰った本を、「昔は本がたくさんあった」と言いながら、わが子をいつくしむようになでるソル。

本好きとしてはあり得ない未来。こんな未来いやだなあ。

 

それと、私が「面白いなあ」と思って好きな設定が、この作品内での「女の取り扱い」。なんと女は「家具」として扱われているこの発想。

個人用と建物用があるらしくて、ヒロイン的な女は殺される富豪サイモンソンの部屋に付属する家具。だからサイモンソンが死んでも関係がない。彼女は部屋つきの家具だから、サイモンソンが死んでも当然そのままその部屋にいつづける。

こういうの、怒る女性っていっぱいいるんだろうけど私は好きだな。すごく面白いと思った。皮肉が効いてる!って。

だって別によくない? フィクションだし、実際にそういう女っているし。嫌ならそういう女にならなければいいだけだ。

 

そしてラスト、私の大好きなソルの、哀しくて美しい決断。映像もすごく美しいと思う。

ソルは世界に見切りをつけて、自ら「死センター」みたいなところに赴く。そしてかつては確実にあった、美しい地球の風景がソルを迎える。

映画が始まってからずっと、あえて色彩を抑えているのか全体的に色味が乏しくて、いうなれば映画全体が「煮物の色」だった。別の言い方をすれば「おじさんの色」。煮しめたような、薄汚れた、人生の色。

それが一転、色彩豊かに、美しい地球が広がる。

70年代のフィルムだから画質は荒い。この美しさは4Kとか8Kとか解像度とか画素数とかとは全然関係ない。そういうのとは違うんだ、この美しさは。

いいなあ、この人生の終わらせ方。理想の死に方を考える時、いつも私はソルを思い出す。

 

 

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