ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

ショック集団(1963)

 

 

題名 ショック集団(Shock Corridor)
監督 サミュエル・フラー
制作 サミュエル・フラー
脚本 サミュエル・フラー
出演 ピーター・ブレック、コンスタンス・タワーズ、ジェームズ・ベスト、ハリー・ローデス
上映時間 101分
制作年 1963年
制作国 アメリカ

 

 

精神病院でスローンという男が殺される。犯人は不明だが、入所者のなかに目撃者が3人いる。3人とも狂人だが、ジャーナリストの主人公は精神病院に潜入して彼らを取材し、ピューリッツア賞をものにしようと目論む。1年かけて狂人のふりをする訓練を受け、潜入に成功。狂人たちと生活を共にし、スローン殺しの犯人の名前を聞き出すことに成功するが、その頃には主人公の精神も蝕まれ、最後は廃人になってしまう。

 

 

90年代の中頃、深夜枠でこの映画が放送されていて、たまたま見たら男が突然立ち上がってこう叫んでいた。

引用:「私はアメリカ主義者、白人至上主義だ! 聞け、同胞よ! アメリカは白人のものだ! 石を投げ、爆弾を投げつけるのだ! 黒人の外国人どもを吹き飛ばせ! (中略) 白人市民会議とKKKを出動せよ!アフリカ人を追い払え! 黒人の母親や子供を葬り去れ! アメリカは白人のもの!学校を守れ!旧教徒め!ユダヤめ!黒人め!黒人を殺せ!」

 

 ・・・あなた黒人ですけど。

このシーンがあまりにも衝撃的で、この記憶だけを頼りに20年間くらいなんとなく探していたら、この映画のDVDにたどり着いた。

「狂人ばかりの環境で狂人を演じ続けると、本当に狂人になるのか」という思考実験的なテーマの作品。

 

この映画に出てくる精神病患者たちはなかなか味わい深い。

黒人なのに自分を白人だと思い込み、黒人を憎む白人至上主義者、

自分が南北戦争の南部の英雄である将軍、J・E・B・スチュアートだと思い込む者、

精神年齢が6歳に退行した物理学者。

ほかにも大勢の淫乱女や、自分がオペラ歌手だと思い込み夜な夜なオペラを歌う男などが出てくる。彼らの行動はユーモラスでユニーク。興味深い。

 

とはいえ25年ぶりに見たら、ずいぶん安っぽい映画だった。私ったら、脳内でかなり上位変換していたみたい。もっとスマートな作品として記憶していたけれど、こんなだったのか。

全体的にかなり激しく大げさで感情的な演技に、「ジャジャーン!」って大袈裟な音楽を当てて、アングルもあおりで撮って不安感や狂気を強調する、という感じ。すべてが過剰で、バタバタと騒々しい。

妻役の女優も安っぽいし、主人公の夢の中に出てくる裸女(?)の特撮映像も安っぽい。主人公がやたらモテモテ?で色情狂の女集団に襲われたりするのも安っぽくて、とにかく全体的に演出が安っぽい。

 

B級映画の雄サミュエル・フラーだからこういうもんなのかもしれないけど、せっかくテーマは意欲的なのだから、すごくもったいない。

この作品は、妻はいなくても成立する映画だと思うからいらない。色情狂女集団もいらない。もっと言えば女が出てくる部分はことごとくいらなかったと思う。

サミュエル・フラー監督は、『拾った女(1953)』が素晴らしくって、私は相当好きな映画。あれはとても良かった。

だから女さえ出さなければ、もっとずっとクールで格好良くて、重いテーマが生きる格調ある映画になったのではないかと思う。

 

 

ショック集団 [DVD]

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