題名 サムソンとデリラ(Samson and Delilah)
監督 セシル・B・デミル
制作 セシル・B・デミル
出演 ヘディ・ラマー、ヴィクター・マチュア、ジョージ・サンダース、アンジェラ・ランズベリー
音楽 ヴィクター・ヤング
上映時間 128分
制作年 1949年
制作国 アメリカ
「山!」 と言えば 「川!」 の合言葉なみに、「デリラ!」 と言えば 「男を裏切る悪女の代表!」というくらい有名な、聖書でおなじみのエピソードの映画化作品。
ロン毛のサムソンは、岩を持ち上げライオンを素手で倒す怪力男。そのサムソンに思いっきり片思いしているデリラが、サムソンを自分に振り向かせようとあの手この手で執着しまくるという話。
これは純愛なのか、ストーカーなのかがテーマ(ウソ)。
聖書の方の主役はサムソン。デリラの方はどうかと言えば、有名な割にはサムソンから怪力の秘密を聞き出すためだけに出てきて、それでデリラの出番は終了。実際悪女なんでしょうけど、割とあっけないし、ハッキリ言って脇役。
そんなそっけない「サムソンとデリラ」の話を、がばっと広げて脚色した結果、超わかりやすい娯楽スペクタクル作品に仕上がりました。そしてめちゃくちゃ面白い。
怪力男サムソンは、ほぼ無敵の怪力なのだけど秘密があって、髪を切ると力がなくなってしまう。そしてセマダルに惚れている(でもセマダルには婚約者あり)。
そのセマダルの妹が問題のデリラで、サムソンに熱烈片思い中。サムソンをなにがなんでも手に入れたい。このデリラのサムソンへの執着がすごい。フラれてもフラれても食らいつく。
でも残念なことにサムソンはデリラに全く興味がない。
サムソンがペリシテ王に気に入られるきっかけを作ったのはデリラなのに、王に「褒美をつかわす」と言われたサムソンが望んだのは姉のセマダルとの結婚だし、
その結婚式でサムソンが目を離した隙にセマダルが元婚約者と式を挙げちゃって(!)、父親が 「妹もいるよ、デリラでよくない?」(!)と、舐めたことを言った時、デリラはちょっと嬉しかったのに、サムソンは「舐めんな」とキレて大暴れ。
セマダルが死んで参列者も全員死んで(!)、サムソンが家に火をつける(!)という大惨事に。もう突っ込みどころ満載の、驚きの展開。気持ちわかるけどそこまでするか。
そんな感じに全身全霊で人が死ぬほど拒絶されて、「そんなに私が嫌なの」となったデリラはサムソンに復讐を誓うけど、これは可愛さ余って憎さ百倍、「復讐したいけど愛してる、愛してるから復讐したい」と愛憎渦巻き、ますますサムソンへの執着を募らせる。
その後、落ちぶれたサムソンに対して、王の愛人に昇格していたデリラは、その行動の端々にサムソンへの愛が見え隠れしてなかなかエモい。
王が怪力のサムソンを手に入れようとした時も、「私が怪力の秘密を聞き出すわ、でも彼には絶対に刃をあてず、流血もさせちゃだめよ」と例のセリフを言ったりして、乙女心が見え隠れ。
そして刀もあてないし血も流さないけど両目をつぶされ家畜同然の扱いを受けていたサムソンを見たデリラの、その後の健気さもハンパない。とにかくエモいのよ。
ところがそんな健気さも見せて女を上げたかな?と思いきや、新たに登場した恋のライバルであるミリアムに、サムソンの命がかかっている局面なのに、「あんたは彼を独占したいだけでしょ。あんたに渡すくらいなら殺す方がマシ」ってキッパリ言ってた。「彼の命がそれで助かるなら私は身を引くわ」的な発想がゼロ。
もうサムソンが好きすぎて訳わかんなくなっちゃってんの。私はあんた好きよ。
美人でなければ許されないデリラの執拗な恋心は報われるんでしょうか。ラストを見て、私は報われたんだと思ったけど。
ところでこのデリラをやった女優ヘディ・ラマーが凄い。美人なだけじゃない。人生がまるで漫画。
女優 → 城に幽閉 → ナチスドイツから逃亡しパリへ → スカウトされてハリウッド入り → 発明家になる → 人気が陰り女優引退 → 万引きで捕まる → 美容整形するもイマイチ → 85歳で死去
発明もドメスティックな主婦の発明とかいうレベルではなく、軍で使用されるような本格的なやつ。美人で、頭もすこぶる良かったらしい。伝記読みたい。自伝とか出してないんすかね。