ぱっとみ映画感想ブログ

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吸血鬼ノスフェラトゥ(1922)

 

 

題名 吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens)
監督 F・W・ムルナウ
原作 ブラム・ストーカー 『吸血鬼ドラキュラ』 1897年
出演 マックス・シュレック、グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム、グレタ・シュレーダー、アレクサンダー・グラナック
音楽 ハンス・エルトマン
上映時間 94分
制作年 1922年
制作国 ドイツ

モノクロ、サイレント

 

 

『吸血鬼ドラキュラ』 の初映画化作品。監督したのは映画 『最後の人(1924)』 も傑作なF・W・ムルナウ。ちょっと長いがあらすじを書いておく。

 

 

ドイツ、ブレーメンの不動産屋で働くハーカーは、契約書にオルロック伯爵のサインをもらうため、愛する妻ニーナを残し遠路はるばるルーマニアのトランシルヴァニアに住む伯爵の元へと向かう。

途中で泊まった宿に置いてあった「吸血鬼」の物語を読んで不安になったりしつつ、でもまあそれはそれとしてオルロック伯爵邸にたどり着くと伯爵に「遅い!」と叱られる。それでも契約書にサインをもらって、その日は夕飯をごちそうになり、伯爵の家に泊まることになる。

ところがオルロック伯爵は実は吸血鬼で、ハーカーは怪我した指をなめられるが首は無事で、特に吸血鬼になったりはしない。

その頃、妻のニーナは(たぶんオルロック伯爵の魔力で)夢遊病の症状がでたうえ、吸血鬼の悪夢にうなされて医者にかかっていた。

一方、オルロック伯爵は棺に故郷の土を敷き詰めて、棺ごと船に乗り込みドイツへと向かおうとする。それを知ったハーカーは阻止しようとするが失敗。オルロック伯爵は船の乗組員の血を吸って次々と感染させて殺し、最後には船長も殺してドイツに到着する。

ハーカーもなんとかドイツへ帰国し妻と再会するが、町はオルロック伯爵の棺からあふれ出たネズミが大量発生し、ペストが大流行するのではと、パニックになっていた。

オルロック伯爵は購入した屋敷から虎視眈々とニーナを付け狙っているが、ニーナはハーカーが持ち帰った吸血鬼についての本に「吸血鬼の呪いに勝てるのは純粋な心の女性だけ・・・その女性が自ら血を差し出し、一番鶏が鳴くまで吸血鬼を自分の傍に留めておくこと」と書いてあるのを知り、自ら生き血を与える決意をする。

ニーナの生き血にありつけたオルロックは、血に夢中で朝日が昇っていることに気が付かず煙のように消滅し、ニーナは息絶えるのだった。

 

 

・・・やや登場人物をはしょってしまったが、大体こういう話。実際はハーカーの友人夫婦がニーナを預かっていたり、ハーカーの雇い主が発狂して精神病院に入って警察をかき乱したり、有名なヴァン・ヘルシング博士も出てくるけれど、分かりにくくなるので省略した。

それから、ドイツ映画なのに英語字幕版だった(サイレント映画あるある)。そのため登場人物の名前も字幕では原作に準じた英語風になっている。

 

ノスフェラトゥは結局のところドラキュラの事なのだけど、一般にドラキュラと言えば、真っ赤な目、犬歯が牙、尖った爪、オールバックの髪型、黒い夜会服、襟が大きく立ったマント、といった、割とダンディなイメージ。

だけどノスフェラトゥは・・・なんかちょっと「あれ?」「おや?」「ん?」な感じ。髪の毛がないじゃん。

どうやら原作ではダンディではなかったらしい。私たちがパッと思い浮かべるドラキュラ像は、1920年代の舞台や、1930年代にベラ・ルゴシが演じたドラキュラ映画のイメージなのだった。

 

その他の設定も、生き血を吸われた人が吸血鬼にはならないし、昼間に眠るときに使う棺に故郷の土を敷き詰めていたり、念力みたいな力で人を操ったりしていて、「おや」と思った。

特に昼間なのに出歩いているような描写があったので、「おや?ドラキュラって昼間に出歩くと死ぬのでは?・・・かなり黎明期の映画だから夜の撮影ができなかったか、白く飛んじゃってるだけで夜設定なのかしら」と思ったが、そうではなく実は原作通りで、原作ではドラキュラは昼間も出歩けるらしい。

 

・・・となると映画の最期でノスフェラトゥは朝日に当たって死んでいたが、なぜ煙になって消えてしまうのかしら。朝日に限って特にNGなのかなあ。ちょっと分からないな。

まあその辺はいつか原作を読んでみるとしよう。

 

ところで本作は私の苦手な「ホラー」といふジャンルなので、怖かったか怖くなかったかを書いておかねばなるまい。

私が見ていて一番「うわああああああ(怖)」となったのは、主人公ハーカーがオルロック伯爵邸で夕飯をごちそうになっているとき、パンをナイフで切ろうとした際オルロックに気を取られ、ナイフで自分の親指をザクザクと切っているところ!

ハーカーはオルロックの話を聞きながら、大きなパンを左手で抱えるように持ち、左親指を立てた状態で、パンの向こう側から自分に向けてナイフを水平に手前に切っていくのだが、パンを支えている左手の親指をギーコギーコと切りはじめ、よそ見していてうわの空だからすぐに気づかなくて、とにかくギコギコギコギコと・・・

 

ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ

 

・・・というわけで、このシーンが一番怖かったから、ホラー映画としてはあまり怖い映画ではなかったと思う。

 

傑作の名に違わず映画は面白かったし、興味深い作品だったんだけど、いっこだけ、一個だけヒロインについて文句言いたい。

映画に出てくる吸血鬼の本に、

「吸血鬼の呪いに勝てるのは純粋な心の女性だけ・・・その女性が自ら血を差し出し、一番鶏が鳴くまで吸血鬼を自分の傍に留めておくのだ」

と書いてあるのを読んで、「これ私だわ!!」ってなるか、普通。鼻持ちならん!

 

気に食わなかったね、私は。この映画で、そこだけが気に食わなかった。