ぱっとみ映画感想ブログ

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ブロンドの殺人者(1944)

 

 

題名 ブロンドの殺人者 (Murder, My Sweet)
監督 エドワード・ドミトリク
原作 レイモンド・チャンドラー 「さらば愛しき人よ」 1940年
出演 ディック・パウエル、クレア・トレバー、アン・シャーリー
上映時間 93分
制作年 1944年
制作国 アメリカ

 

 

私立探偵フィリップ・マーロウは殺人事件の容疑者としてしょっ引かれている。事件の真相を吐くよう刑事に促され、マーロウは過去を回想し始める。

ある日マーロウの事務所に、ムースと名乗る大男がやってきた。6年間も探し続けているヴェルマという女を見つけてほしいというのだ。ムースは金払いが良いが、どこかおかしなところがある。仕事を引き受けることにしたマーロウは、手始めにヴェルマが以前勤めていたバーのオーナーの妻から当たり始める。

オーナーの妻のところから戻ると、別の男が待っていた。男は盗まれた宝石を買い戻すため、金の引き渡しについてきてほしいと言う。男と共に引き渡し場所へ行くと何者かに殴られて気を失う。若い女に声をかけられ気が付くと、金が無くなり、男は顔を割られて死んでいて、名刺にはリンゼイ・マリオットとあった。

事務所に帰ると、今度は若い女が待っていた。彼女はアン・グレイルといい、盗まれた継母の翡翠の行方を追ってマリオットの事件を調べていた。どうやらマリオットが買い戻そうとしていた宝石は翡翠だったらしい。早速アンの父親から話を聞くと、盗まれた翡翠はただの宝石ではなく、6カラットの翡翠が60個連なる高価なネックレスだった。マーロウはアンの継母の話を聞き、今度は翡翠の行方を追い始める。

 

ハードボイルド界で有名な探偵フィリップ・マーロウが主役の、レイモンド・チャンドラー原作『さらば愛しき人よ』の映画化作品。フィリップ・マーロウものが映画化されたのは、これが初らしい。

 

というわけで、私の天敵ハードボイルド作品。今回もやはり、ちっとも面白くなかった。

いや、まったく面白くないってわけじゃない。ストーリイとかは面白いといえば面白いのだけれど、さほど面白くないというか。魅力はあるんだけど、あんま面白くないというか。結局は大して面白くないというか。

ワクワクとかドキドキとか全然しない、ハラハラもしない、笑えもしない、泣けもしない。どういう気持ちになれば正解なのか、私にはさっぱり分からない。フィルムノワールは好きなのに、ハードボイルドはとんと分からん。

 

フィルムノワールとハードボイルドの違いについては、どちらもたいてい白黒映画で、犯罪とか犯罪者をテーマにしているので区別がつきにくい。実際ググると「両者の境界は大変あいまい」とのこと。

でも少し考えてみると、私にとってこの両者はだいぶ違うことが今回分かった。

フィルムノワールは少しだけウェットな感じで、言い方を変えると「人間も描かれている」というイメージ。クールなことはクールなのだけど、それでも人間や人間ドラマに焦点を当てている感じ。

それに対してハードボイルドは「箇条書き」のイメージ。人間を描くのではなく、出来事を箇条書きに並べているだけに感じる。演出が淡々としている。クールというよりはドライ。

そのせいだと思うけど、ハードボイルドはなんかちょっと気分が乗らない。

 

女の扱いも、フィルムノワールの方は、タフぶっててもなんだかんだ言って優しい、みたいな。思わずひっぱたいたりしちゃっても、「なんだよ、しょうがねえな」って言って結局は面倒見ちゃう、みたいな。情に流されちゃう感じ。人間味がある。

ハードボイルドの方は、女がどんなに美人でも、言うこと聞かないと拳骨でアゴを殴っちゃう、みたいなイメージ。「同情なんかしないぜ、だから俺のことも同情するな」って突き放すとか。主人公は優秀で、欠点らしい欠点はないのだけれど、感情とか人間味が乏しくて、孤独で、機械的。

 

ハードボイルドな男、私には格好いいと思えない。むしろ可哀想。こういう人が身近にいたら、私は「ああ、一人で生きてるんだな。じゃあ一人で生きていけばいいんじゃん。さよなら」って思ってシカトして、さっさと忘れそう。なんなら数十年後、「ああ彼ね、彼は可哀そうな男でね」ってバカにしそう。

 

というわけで、私はハードボイルドが分からないし、すこぶる苦手を自覚しているのだけれど、じゃあなんで見たのかといえば、『周遊する蒸気船(1935)』、『ステラ・ダラス(1937)』 と見てきたアン・シャーリーが出ていたから。

たまたまDVDを持っていたので拝見すると、『周遊する~』から10年近く経っているので、「さすが大人になったなあ」という感じ。演技もヘタではなかった。でも特徴的じゃないし、あんまり印象に残る役ではない。

彼女はこの映画を最後に26歳で女優を引退。

私にとってのアン・シャーリーは、やっぱり初々しくて可愛いらしい、『周遊する蒸気船(1935)』一択!という、結論。

 

(補足。ちなみに主役のフィリップ・マーロウを演じたのは、私のかなり好きな作品、『陽気な街(1937)』のディック・パウエルだった。これは偶然の収穫。)

 

 

ブロンドの殺人者

ブロンドの殺人者

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