映画『トム・ハンクスの大迷宮(1982)』のデータ
題名 トム・ハンクスの大迷宮 (Mazes and Monsters)
監督 スティーヴン・ヒリヤード・スターン
出演 トム・ハンクス、クリス・メイクピース、ウェンディ・クルーソン、デヴィッド・ウォレス
上映時間 100分
制作年 1982年
制作国 アメリカ
※TV映画
映画『トム・ハンクスの大迷宮(1982)』の詳しいあらすじ
大学生のジェイジェイ、ケイト、ダニエルの三人は、テーブルトークRPG『迷宮と怪物』に夢中で、ゲームに必要な4人目を探している。それもレベル9で遊べる強者を。
そこへロビーが転校してくる。ロビーは『迷宮と怪物』に夢中になるあまり、前の学校を退学になった強者だ。ジェイジェイは自分が貼ったメンバー募集の貼り紙を見つめるロビーをゲームに誘う。ゲームから離れることを親に誓っていたロビーは最初渋るが、結局はゲームを再開してしまう。
そのうちジェイジェイが ”リアルRPG” をやろうと思いつく。近所の洞窟を舞台に、『迷宮と怪物』のキャラクターになり切って物語を感じようというわけだ。洞窟でのゲームは成功に終わりみな大興奮、しかしロビーは怪物の幻覚に襲われ衝撃を受けていた。
その後ロビーの様子がおかしくなっていく。ゲームではいつも僧侶の役割を演じていたロビーだが、現実でも僧侶のようなふるまいをし始め、部屋を片付け、「禁欲」を理由に恋人のケイトとも別れてしまう。
ロビーは夢に出てくる謎の男 ”偉大なるホール” から「二つの塔へ行け」と指示される。ロビーはジェイジェイ主催のハロウィン・パーティに出席したあと、そのまま姿をくらましてしまう。
ジェイジェイ、ケイト、ダニエルの三人は、ロビーが残した地図を頼りにロビーの行方を追い始める。一方ロビーはニューヨークの街をさまよい歩き、チンピラに絡まれ男をナイフで刺してしまう。しかし頭が混乱しているロビーは、それを覚えていなかった。
助けを求めるロビーの電話から、ロビーがニューヨークにいることを知った三人はニューヨークへ向かう。現実の ”二つの塔” である世界貿易センタービルでロビーを捕まえることに成功するが、ロビーはゲームの世界と現実の世界を行き来し、精神が混乱していた。
保護されたロビーは郊外の家で母親と共に暮らしている。半年ぶりに会いに来た三人。しかし湖畔にたたずむロビーの意識は今もまだゲームの世界にいた。ロビーにゲームへの参加を求められ、三人はこれを最後のゲームにすることにして四人で去っていく。
映画『トム・ハンクスの大迷宮(1982)』の感想
テーブルトークRPG 「迷宮と怪物」 に夢中になった青年が、ゲームのやりすぎで自分をゲームの主人公だと思い込んでしまう。その彼をゲーム友達が現実に引き戻そうと奮闘するが失敗する、というストーリー。
有名なテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をモチーフにし、しかも実際に起きた事件を元にしているらしいが、テーブルトークRPG自体が日本では流行っていないから、そのゲームに懸ける熱量がイマイチ分からない。
しかし映画のテーマは、これがコンピューターRPGであっても大した違いはなさそうだから、もし「ドラクエ」とか「FF」だったとしても、私には共感できなかったと思う。
闇に落ちた主人公の内面にもっとスポットを当てられていれば、コンピューター・ゲームやRPGがあたりまえになった現在にも通じる作品になれたかもしれないのに。
一応、主人公たちは四人とも、思春期にありがちな複雑な心境を抱えている様が映画冒頭に描かれる。
例えばケイトは、モテないわけじゃないんだけどボーイフレンドと長続きしない。それは自分が優秀すぎるからで、男というものは優秀な女の子を敬遠しがちである、と悩んでいる。
ダニエルの家庭は、コンピューター関連の勉強をしたいダニエルに対して、両親はそれを男子一生の仕事とは認めず、遊び程度にするよう諭している。
ジェイジェイの方は、母親がインテリア・デザイナーかなにかで、自宅の模様替えをしょっちゅうしているのだけれど、ジェイジェイの部屋まで一切の相談もなく勝手にリフォームしてしまう暴君ぶりを発揮していた。それも色味がゼロの「100%真っ白」な部屋にされてしまって「病院かよ!」とジェイジェイが怒っていた。
このジェイジェイと母親の関係を見て、ふと『ハロルドとモード(1971)』のバッド・コートと母親を思い出した。こういうのは、例え洒落た部屋になるのだとしても勝手にやってはいけない。
中でも特にロビーの家庭は複雑そう。
ロビーの父親はロビーからゲームを取り上げ、勉強だけするようガミガミいう教育パパで、ママはアル中、両親はいつもいがみ合ってばかりいて、しかも兄のホールは行方不明と来た。そんな家庭のことでロビーは傷ついている。
特に兄であるホールの存在がロビーの成長に大きな影響を与えているらしく、夢の中で「偉大なるホール」として登場するほどのキーパーソンだ。
だけど二人の関係の掘り下げ方が中途半端だから、上辺だけで薄っぺらく滑ってしまい、ラストのクライマックスでさえ全く心に響いてこなかった。
不発。
というわけで、私にとってこの映画はただただ、『マイ・ボディーガード(1980)』で賢そうな少年を演じていたクリス・メイクピースが、ちょっと大人になって登場してきて、今回もIQ190の天才少年を演じていたのが80年代初頭な感じがして懐かしかったくらい。
ところで今作はトム・ハンクスが 『スプラッシュ(1984)』 でスターになる前の作品。
この映画みたいに、邦題に「トム・ハンクスの」とか俳優名がつく映画は、日本では未公開で、スターになった後で昔の作品が公開あるいはビデオ発売される時につけられることが多い気がする。
『トム・クルーズ/栄光の彼方に(1983)』 とか 『ジャクリーン・ビセットの アンナ・カレーニナ(1985)』とか『リンゼイ・ワグナーのヤング・アゲイン(1986)』とか『ブルック・シールズのプリティ・ギャンブラー(1979)』とか『ジム・キャリーのスキーでヤッホー大作戦!(1983)』 とか。
この80年代特有な感じ、懐かしい。
ま、どうでもいいことだけども。