映画『キング・ソロモン(1950)』のデータ
題名 キング・ソロモン(King Solomon's Mines)
監督 コンプトン・ベネット、アンドリュー・マートン
出演 デボラ・カー、スチュアート・グレンジャー、リチャード・カールソン
上映時間 103分
制作年 1950年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
映画『キング・ソロモン(1950)』のあらすじ
1897年、アフリカ。金持ちの白人相手にガイド業を営むアランは、仕事に飽きて英国に帰るか思案中。そこへ行方不明になった夫を探しに英国から大金持ちのエリザベスがやってくる。アランは渋々ガイドを引き受け、サバンナを行く冒険の旅がはじまる。
映画『キング・ソロモン(1950)』の感想
1937年の『キング・ソロモン』のリメイク作品で、モノクロからカラーになったことも相まって、リメイク大成功な作品。
キング・ソロモンの秘宝とやらが出てくるが、この映画はエリザベスの旦那を探すことが目的だから、なんと宝には目もくれない。
そしてアフリカの秘境を行く割には「息もつかせぬハラハラドキドキ!」といったアトラクション・ムービーでもない。
全編、旦那が探していた財宝を目指して歩いているだけ。
しかし侮るなかれ、アフリカの大地と野生動物たちの躍動感あふれる映像と原住民のダンスの美しさが圧巻。
紀行映画みたいなリアリティ重視の、地に足が着いた大人っぽい娯楽作になっていて、他のありがちな「財宝探し映画」とは一線を画しているのが特徴的。
例えば山火事で野生動物の群れが一団となって逃げ惑うシーンなんて迫力満点。言葉ではとても表現できない。
一体どうやって撮影しているんだろう・・・と思いきや、あの『ベン・ハー(1959)』の、あの戦車シーンを監督したアンドリュー・マートンだった。
さすがですな。彼だけでひとジャンル築いてもいい才能である。
そしてアフリカに多数存在する民族のファッションやメイク、佇まいの格好良さ、美しさ。
旅の途中で出会った部族の若き長らしい男の頭飾り!これはパンク、いやサイバー・パンクとも良く合いそう。めちゃくちゃ格好いい。
さらに特筆すべきは最後に訪れた、エリザベスの夫カーティスの最期の地で見る、原住民の躍動美あふれるダンス。「生命の喜び」とか「大地の息吹」というか、ちょっと日本人では真似できない、大地から湧き上がってくる音楽とダンス。
これぞアフリカ。私たちが見たいアフリカがこの映画にはある。
登場人物も魅力いっぱい。
エリザベス役のデボラ・カー。赤毛が美しくて、ちょっとユマ・サーマン似で、勝ち気で鼻っ柱が強く、プライドが高くて頑固で、でも可愛い。無敵。
上流社会の奥様だけど、旅を続けるうちにどんどん逞しくなっていく。長く美しい髪の毛を、「邪魔だから」と自らハサミでじょっきり切ってしまい、しまいには足元にあった卵を見て「食べられるかしら」とかなんとか言っていた。
そして彼女はアフリカの大自然の中で、まるでシャンプーのCMかと思う程、泡を立てて髪を洗っていた。しばらく風呂に入ってないと思うから、あんなに気持ちよく泡立たないと思うぞ。
他の登場人物では従者のキバと、途中でついてくるサンボカ。
従者のキバは、赤い帽子をくいっと下げる癖があって、最初っから可愛いの。彼は左耳の耳たぶに巨大な穴をあけていて、そこに小さな樽みたいなのを差していて、これがソーイング・セットなの。で、耳たぶからその樽をはずして、中から針と糸を出して繕い物するの。これが可愛くて面白かった。
そしてアフリカの王サンボカ。彼は登場した瞬間から、ミステリアスで誇り高そうな、過酷な大地をすいすいと風のように生き抜いていきそうな、悟りを開いた仙人みたいな佇まい。全く、高貴な人間として生まれるとはこういうことなんだろう。
わざとらしいBGMが一切流れないのもいい。流れる音楽はアフリカ人たちが奏でる音楽だけ。
とても素晴らしい映画だった。
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