題名 善人サム(Good Sam)
監督 レオ・マッケリー
出演 ゲイリー・クーパー、アン・シェリダン、レイ・コリンズ
上映時間 128分
制作年 1948年
制作国 アメリカ
百貨店の支配人サムは異常なまでのお人よし。他人にお金を貸すだけでなく、車が故障したと聞けば自分の車を貸し、車の修理代まで払ってやり、その貸した車で事故られて、被害者から訴えられても人助けをやめられない。職のない義理の弟だけでなく、自殺未遂を図った百貨店の従業員まで居候に迎える始末。
そんなサムを心から愛する妻ルシールはサムをずっと支えてきたが、彼女にはたったひとつ夢があった。それは理想のマイホームを手に入れること。偶然にも理想的な家を見つけたルシールが、早速その家を買おうと提案するが、すでにサムは全財産を他人に貸していた。
ゲイリー・クーパーって意外と演技上手いんだな、と思った。すごくお人よしの善良の塊、見方によっては間抜けな馬鹿みたいにも見える役を、とてもチャーミングに演じていた。
前情報ゼロで見始めたから、映画が始まった時は「なんかゲイリー・クーパーに似てるな」って思ったらゲイリー・クーパーだった。それくらい表情筋が緩んでて、彼のイメージの「キリッと二枚目、男前」ではない顔をしていた。
懐が広くて包容力の塊と言える“理想の妻”ルシールを演じたアン・シェリダンも良かった。夫のお人よしを最大限に支えつつも、家庭を二の次にして他人のためにばかり尽くす夫にほとほと参ってしまって、最後の方はさすがにキレて本音をぶちまけたりする。そのぶちまけているところもチャーミングで “理想の妻” の基礎は揺るがない。
私みたいなひねくれた人間だと、「け。なんだ偽善映画か」って、たいてい思っちゃうんだけど、そんなに思わなかったのはこのアン・シェリダンの魅力かも。
基本的にはキリスト教的な性善説に支えられた映画だと思うけど、不思議と嫌味がなかったのは、ベタベタとウェットにならず軽いタッチで描いたことが勝因か。
そしてついでに、娘役の女の子がやんちゃで可愛いくて笑わせてくれたのも○。