ぱっとみ映画感想ブログ

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フォーリング・ダウン(1993)

 

 

 

 

 

映画『フォーリング・ダウン(1993)』のデータ

題名 フォーリング・ダウン(Falling Down)
監督 ジョエル・シューマッカー
脚本 エブ・ロー・スミス
出演 マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル、バーバラ・ハーシー、レイチェル・ティコティン、チューズデイ・ウェルド
上映時間 118分
制作年 1993年
制作国 アメリカ

 

 

映画『フォーリング・ダウン(1993)』のあらすじ

うだるような夏のある日、主人公のフォスターは渋滞にはまっている。車のエアコンは壊れているし、周囲は騒々しいし、フォスターのイライラが募る。とうとうフォスターは車を捨てて歩き始める。目的地は別れた妻の住む家だ。

途中、妻に電話をかけようと、韓国人が経営する雑貨屋に立ち寄るが小銭がない。その両替をめぐって店主と揉め、フォスターは店をめちゃくちゃにし、店主が自衛用に置いていた野球バットを片手に店を出る。

店で買ったコーラを飲みながら空き地で休憩していると、二人組のチンピラに絡まれる。フォスターは激高し二人を追い払う。手元にはチンピラが持っていたバタフライ・ナイフが残っていた。

妻の元へ向かうフォスターは、途中で妻に電話をかけ、娘の誕生日プレゼントを持って家に行くと告げる。すると空き地でやっつけたチンピラたちが報復にやってきて、フォスターめがけて銃を乱射する。弾はフォスターには当たらず、チンピラのひとりは勝手に事故って死亡する。フォスターは散らばる銃を拾い、もう一人のチンピラの足を撃ち抜く。そして銃が沢山詰まったボストンバッグを持ち去る。

その後もフォスターは行く先々で暴力沙汰を起こす。そのフォスターを刑事プレンダガストが追っていく。

 

 

映画『フォーリング・ダウン(1993)』の予告編

www.youtube.com

 

 

映画『フォーリング・ダウン(1993)』の感想

家へ帰ろうとしている男フォスター。彼はただ家に帰りたいだけなのに、途中で色んな事が起きて、徐々にフォスターの本性が露わになっていく、という話。まるで武器のわらしべ長者みたいに、フォスターが偶然手に入れる武器がどんどんエスカレートしていく。

フォスターは元々やばいサイコ野郎なのだけど、彼なりに頑張って抑えて紳士的に振舞おうとしている。なのに、周りがあまりにも理不尽な奴らばかりなために耐え切れず、元々あったサイコっぷりがフル発動してしまう、というキャラ。

本当は相当怒っているのに、本性が出ないように自分の体力を総動員して押さえつけ、キレないようにキレないように抑えているという、このジリジリした感じがすごく伝わってくる。

あえて少しゆっくり目の演技をしていることで「我慢しています」という雰囲気を与えつつ、キレる時はいきなりキレる。だからそのゆっくりさが怖い。

このフォスターを演じるのは、強欲そうにアゴが割れたマイケル・ダグラス。

今回もさすがの出来。彼は大ヒット作をたくさん持っていて、しかもハズレがない。もう好きとか嫌いとかを軽く超越したお方だと思う。

 

とはいえフォスターだけがヤバいヤツなわけじゃない。出てくる奴がみんなヤバい。

最初に出てくる雑貨屋のおやじからしてもうヤバい。差別的だし、侮蔑的だし、フォスターの方がよほど紳士的。

スラムのギャングたちも当然イカレてて、「ここはファベーラですか」と問いたいし、

ミリタリー・ショップの店主が一番最悪で、差別主義で暴力主義、女性差別も甚だしく、マチズモ主義でヒトラー賛美のサド野郎というてんこ盛り。お前どうしたの。どうしたらそんな人間になれるの。最悪のマッチョ右翼。

 

それだけではない。ほんの通りすがりのモブキャラまでがフォスターに金をせびり、渡さないと口汚く罵るという、どこまでも乞食根性が沁みついた男だった。ストーリーには直接関係ないこいつが一番、腐敗臭がした。

「アメリカって一体、どういうところなの? これで文明国と言えるの? 絶対住みたくない」と思った。

この映画の主題はフォスターのヤバさではなく、アメリカ社会のヤバさ方なのだと思う。フォスターは、アメリカ社会が作り上げたモンスターなのだ。

 

そのフォスターに対して、ロバート・デュヴァルが演じたプレンダガスト刑事の方はまるで真逆の性格。ひたすら感情を抑えて生きてきたらしい。

猛烈にヒステリーな妻がいて、職場に何度も何度も電話をかけてきては、ギャーギャーギャーギャーまくしたて、挙句の果てには無理やり「愛してるよ」と言わせるという、とんでもない妻だ。職場で「愛してるよ」と言わされるブレンダガストが気の毒過ぎた。

おまけに同僚に馬鹿にされるし、何よりぜんぜん仕事にならないのである。

この妻もモンスター。

でも彼は、若き女性刑事サンドラから 「奥さんをそういう風にしたのはあなたでもあるのよ。ガツンと言ってやりなさいよ」 とハッパをかけられ、ついに妻に「ビシッ!」と言うことに成功する。

 

この作品はそういう、感情を抑えきれないフォスターと、感情を抑えて生きてきたブレンダガストという、感情の出し方、取り扱い方に失敗してきた二人の男が、片やさらに盛大に失敗し、片やとうとう成功する男の物語でもある。

 

というわけで、センセーショナルなハリウッド娯楽作に見せておいて、しっかりアメリカ社会の異常性を描いた傑作なのだった。

 

 

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