
映画『ディーバ(1981)』のデータ
題名 ディーバ(DIVA)
監督 ジャン=ジャック・ベネックス
出演 ウィルヘルメニア・フェルナンデス、フレデリック・アンドレイ、リシャール・ボーランジェ、チュイ・アン・リュー
音楽 ウラディミール・コスマ、アルフレード・カタラーニ 「ラ・ワリー」
上映時間 118分
制作年 1981年
制作国 フランス
映画『ディーバ(1981)』のあらすじ
主人公のジュールは熱烈な歌劇マニアで、平凡な郵便配達夫。決して歌声を録音しない黒人オペラ歌手シンシア・ホーキンスに心酔している。
そのシンシアの歌声を隠し録りしたことと、犯罪組織の黒幕の名が録音されたカセットテープを偶然手にしてしまったことから、ジュールは二つのテープをめぐって二つの犯罪組織に狙われる羽目になる。
命を狙われるジュールを助けるのは、謎の男ゴロディシュと謎の少女アルバ。そして憧れのシンシア・ホーキンスとの、つかの間の交流が描かれる。
映画『ディーバ(1981)』の予告編
映画『ディーバ(1981)』の感想
映画冒頭に流れる「ラ・ワリー」の導入から一気に映画に引き込まれる、80年代青春映画の傑作。そして観終わった後も、映画の ”青” が余韻に残る。
私にとっては10代の頃の憧れの映画。
あらすじを読むと、ハラハラドキドキのサスペンスといったストーリーだけれど、この映画の肝はストーリーではなく、スタイリッシュな映像と、ガジェット好きにはたまらないサブカル臭満載なところ。
まず主人公ジュールがシンシア・ホーキンスのリサイタルに持っていく録音機材がNAGRA(ナグラ)のポータブル・オープンリール・デッキというところから始まって、
ジュールが業務用リフトにバイクごと乗って「ぐおおおん」と上がると自宅があって、そのフロアにはなぜだか廃車がゴロゴロしていたり、
家のドアであるプラスチックの半透明の黄色い板を観音開きにして中に入ると、部屋は広いロフトでオープンリールのデッキやステレオが所せましと並んでいて、
床や壁中に車や人物のアートがたくさん描かれていて、その車の絵のヘッドライトが点滅して、床にはラクエル・ウェルチらしきヌードの絵があって、、、
って、どんな物件なのかしら。
個人的に一番気に入っているのが、前輪の泥除けにロールス・ロイスのシンボル「フライング・レディ」がついているジュールのモビレット。
一説には、盗もうとすると引っ込むとも言われているフライング・レディを原付につけるなんて、めちゃくちゃ格好いい。
10代の頃、このバイクに憧れて真似したかった。その後、このシンボルだけでも百万円とも二百万円とも言われる超高級品と知って、無理と諦めた(そもそもバイク持ってないし)。
そしてジュールだけじゃなく、ジュールに絡むメンツもみんなおしゃれ。
例えばレコード・ショップで万引きする、ベトナム系不思議少女アルバ。
LPを盗む大胆な手法といい、オペラ座がプリントしてあるタイト・スカートといい、発言も行動も、まだ少女なのにいくつもの修羅場をくぐってきたかのような落ち着きっぷりが不思議さを増す。
そしてその謎少女アルバを、ペットの様に愛でる謎の男ゴロディシュ。悟りの境地にいる男。波を止める夢をみる男。神のごとくすべてを見通している男。乗っている車はシトロエン11CV。
そして水中眼鏡をかけてバケット・サンドを作りながら禅を語る。バケットにナイフでバターを塗りながら何か難しいことを言っていたが、何を言っているのかは全然わからない。
このゴロディシュも巨大なロフトに住んでいて、大きな部屋にぽつんと置かれたバスタブに葉巻を咥えて浸かり、なにやら考えている。そのゴロディシュの周りをアルバがローラースケートでぐるぐると回る。
ゴロディシュとアルバの関係は、まるでシャアとララァのよう。
彼はジュールの危機を、まるで知っていたかのように先回りしてジュールを救う。神出鬼没、超能力を持つスーパーヒーローみたい。
「ありえないけど、まいっか」みたいな、およそ現実味のない男なのだけれど、そのミステリアスなところがゴロディシュの魅力なのだ。
このゴロディシュをやっているのが、リシャール・ボーランジェ。彼はピーター・グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人(1989)』でも、やはり「すべてを把握している男」をやっていた。
あともうひとつモブキャラで、ジュールが買う黒人娼婦が出てくるけど、その彼女の部屋と思しき部屋に、誰でもない胸像が置いてあって、その頭にジュールがバイクのヘルメットをかぶせてるんだよね、、、
これも憧れたなあ。私も真似したいって思った(バイク持ってないけど)。
もちろんガジェットだけでなくて、ジュールとジュールが憧れる黒人オペラ歌手シンシア・ホーキンスの関係が素晴らしく美しい。
今風に行ってしまえば、推しと、推しと仲良くなった歌ヲタクの男の子の関係だけれど、親密になりすぎず、でもお互いを信頼している、絶妙な距離感で描かれる。
このジュールをやったフレデリック・アンドレイは、日本ではこの一作がすべて、みたいな俳優だけれど、きゃしゃで繊細そうで、まるで青春の一瞬を切り取ったかのようなきらめきがある。
どことなく影があって、単純明快な明るい個性じゃないところがすごくいい。悲しみや思慮深さを感じさせる表情で、月夜が似合う佇まい。
そして黒人オペラ歌手ディーバを演じたウィルヘルメニア・フェルナンデスも、本職の歌はもちろん、女性らしい包容力と愛情が静かに伝わってくる。
霧雨が降る青色の朝、パリの街を傘を差しながら歩く二人が詩のように美しい。
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