ぱっとみ映画感想ブログ

1999年までの映画 特化型ブログです

ブロードウェイ(1941)

 

 

題名 ブロードウェイ (Babes on Broadway)
監督 バスビー・バークレー
出演 ミッキー・ルーニー、ジュディ・ガーランド
上映時間 118分
制作年 1941年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ

 

 

お金はないけど夢はある、売れないミュージカル俳優たちが「じゃあ自分たちでミュージカルを作っちゃおうぜ!」と盛り上がっていく青春映画で、若者たちの溌剌とした善意と野心がきらきら光ってた。

 

ストーリーの前半を今風に例えてみれば、

スターを夢見て地下アイドルをやっている女の子が、ある日坂道の今野さんと出会って「秋元さんに紹介してあげる。オーディションをやるから参加しなよ。秋元さんに気に入られたら新しい坂道に入れるよ。でも他の子には内緒だよ」と言われて舞い上がり、黙ってられなくってX(旧ツイッター)でつぶやいたらアイドル志願者がわんさかオーディションに集まっちゃって秋元康が怒っちゃったので、仕方なくみんなで新しいアイドル・グループを立ち上げる、みたいな話。

ただし、第二次世界大戦下の社会情勢とか人間風刺が効いているところがミソ。

 

売れない役者のトミーは、自分たちでミュージカルを上演したいけど劇場を借りるお金がない。そこへ“孤児の子供たちを田舎へ連れていくための資金集め”という大義名分が降ってくる。

これは世間に注目されること請け合い、子供たちをダシに使ってショーをやり、カンパしてもらったお金で子供たちを田舎に連れて行き、さらには劇場を借りてミュージカルを上演しよう、と一石二鳥を目論む。しかも好きな女の子ペニーの気を引くことにも成功する。

ところが途中から、イギリスから疎開しに来た子供たちまでもを利用しようとして、さすがにペニーも「ちょっとちょっと、善意ってほんと? 利己的なやつなんじゃあないの?」とトミーの人間性を疑い始め、トミーは「愛をとるか、夢をとるか」で悩む。

 

「これは偽善なのか偽善でないのか、だれが一番偽善かな」という感じで映画は進むけど、出てくる人は基本的に全員が善人。全員が。だからみんなが偽善者候補なのね。

 

私はトミーじゃなくて、ペニーたち女性陣が偽善者だと思ったクチ。

映画はアメリカ映画だから最後はハッピーエンドに向かうわけだけど、現実には夢を取らないと一生後悔するし、将来ペニーを恨むようになると私は思う。

まあ、この辺は結構意見が分かれそう。恵まれない子供たちの思い出作りの方が、自分の夢より大事だって思う人も多そうね。

 

その上、映画の終わり方もいわゆるミンストレル・ショー(黒塗りショー)で、今だと相当物議を醸すだろう演出。私は見ていて「楽しい!可愛い!いいなあ、楽しそうで」って思ったクチ。

私には悪意はまったく感じられなかったけど、その「悪意なく差別的というのが一番差別的なんだよ!」って思う人は思うんだろうな。

 

そんな感じで、急速にモラルというものが変化していく現代なので、図らずも見たこっちのモラル感が試される映画になっちゃってると思う。

 

 

それはさておき、私はこの映画で、第二次世界大戦初期にドイツからの大空襲を避けるために、英国の子供たちがアメリカに疎開していた事実を知った。

ロンドンがナチスドイツの大空襲に見舞われていたことは辛うじて知っていたけれど、アメリカに疎開していたとは知らなかった。

 

確かになあ、考えてみれば、日本だって大東亜戦争の時は子供たちが盛んに田舎に疎開していたわけで、ロンドン空襲の規模を考えれば、イギリスだって疎開はするだろうし、イギリスの場合はそれが同じ英語圏のアメリカに至っても不思議じゃない。

 

映画を見ると、イギリスの子供たちは親元を離れ、子供たちだけでNYに渡っているようだった。そしてNY市(?)がその子供たちを迎え入れる時、広場に人々を大勢集めてラジオでも放送するという、大々的なイベントにしていて、トミーはそこに乗っかって自分たちのショーを宣伝しようとするのだ。

その子供たちはいずれも可愛らしくて、健気に「お母さん、ぼく元気だよ、アメリカの人はみんな優しいよ」みたいなことを、“ラジオを通して” 遥か海の向こうのロンドンに届ける。だからもちろん、アメリカ中の人にも届くのだ。

 

映画公開当時、アメリカはまだ参戦していないから、この映画を見た当時の人は、「イギリスのミナサン、カワイソウ、タスケテアゲナキャ!」ってなるって寸法 (この年の12月に日本が真珠湾攻撃をやって、それで「報復!!」ってなってアメリカは参戦する)。

 

というわけで、偽善っぽさだけでなく、若干のプロパガンダ臭もあるけれど、別にプロパガンダ映画ではないと思う。たまたま時代が第二次世界大戦真っただ中だったから、たまたまプロパガンダっぽくなっちゃっただけだと思う。

もちろん戦争に乗っかったストーリーを作ってるわけだから、結果的にはプロパガンダなのかもしれないけど、消極的プロパガンダであって、やっぱり結果的にそうなっちゃっただけだと思う。

 

だって映画自体はただの普通のミュージカル青春娯楽作。

当時いくつか作られた「裏庭ミュージカル(backyard musical)」の中の一本。あの『ザッツ・エンタテインメント(1974)』という有名なミュージカル・アンソロジー映画でも紹介されていたやつ。

いくつか作られたジュディ・ガーランドとのコンビ作の中の1本で、監督はバスビー・バークレー。とはいえ、彼の代名詞である万華鏡のような「バークレー・ショット」はお目にかかれない。

 

だけどディズニー・アニメの登場人物みたいな動きをするミッキー・ルーニーにお目にかかれる。この映画はミッキー・ルーニーの映画なのだ。

写真でしかミッキー・ルーニーを知らないと、なんでこいつがそんなスターだったのか、理由が分からないという人もいると思うけど、映画を見れば分かる。

彼は初めから終わりまで出ずっぱりで、歌ったり踊ったりおどけたりと大活躍。その扮装も表情も動作も楽しくて可愛い。生き生き、ハツラツ、弾けてた。彼を見てると元気になる。

ジーン・ケリーとかもそうだけど、当時は人間なのにアニメみたいな動きをするダンサーが何人もいて凄いのよ。まじで必見。

 

 

ブロードウェイ(字幕版)

ブロードウェイ(字幕版)

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