題名 紀元前百万年 (One Million Years B.C.)
監督 ハル・ローチ
出演 ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス
上映時間 80分
制作年 1940年
制作国 アメリカ
名の知れたラクエル・ウェルチ主演『恐竜100万年(1966)』の、オリジナル版がこれ。
リメイクの1966年版ではラクエル・ウェルチのダイナマイト・ボディが、オリジナルの1940年版ではヴィクター・マチュアのダイナマイト・ボディが拝める仕様になっている。
ストーリーはほぼほぼ一緒。
簡単に言えば、紀元前100万年の太古の昔、原始人のトマクが家族と喧嘩して家出して、高度な文明を持った別の部族と出会ってそこの女に惚れられて、色々教えてもらったのに恩をあだで返してしまって、それで追い出されてロアナと一緒に家族の元に帰ると火山が爆発して大勢死んで、生き残ったトマクとロアナが未来を誓う、という話(だいたいこんな感じ)。
目立つのが女のロアナか、男のトマクか、という違いくらい。
主演のヴィクター・マチュアは、マッチョでたれ目、顔のすべてのパーツが大きめで鼻も唇もちょっとエロい感じ。好き嫌いとは別にして、二枚目であることは間違いない。「美丈夫」というのか、どこかこう、リッチな感じがする(貧乏人役は似合わないと思う)。
マチュアはこの『紀元前百万年』がデビュー作。その後『サムソンとデリラ(1949)』『聖衣(1953)』などの聖書映画でスターになる。
この映画に出たのが26~7歳くらい。やっぱり若いので少しスリムで格好いい。マッチョ好きにはおすすめ。私は特別ファンではないのに4~5作品は観ているから、自覚がないだけで好きなのかもしれない。
この映画でのマチュアの役柄は、同じ原始人でも ”文明が遅れている方” の原始人なので、文明的に進んだシェル族と比べると野蛮さが強調された演出がなされている。
家族なのにすぐ喧嘩して殺しちゃうし、ロアナを奪われそうになると、一発殴って槍で刺す、みたいな。親を親とも思わない感じとか、俺さえ生き残れればいいみたいな、弱肉強食感が強め。リメイク版よりワイルドだった。横暴度が高い。
ロアナ役はキャロル・ランディス。私は彼女をまったく知らなかったので調べてみた。
Wikipediaによると、家庭は裕福ではなかったようで、高校を中退して芸能界を目指し、フラダンサーとか歌手とかをして小金をためて、金髪に染めてハリウッドに挑戦。ピンナップ・ガールとしてたくさんのセクシーポーズをとった結果、映画に出られるようになるけれど、ずっとノンクレジットの端役ばかりだった。ところがこの『紀元前百万年』が大ヒットして、一躍スターの仲間入り。歌えることもあって、ヒロインの友達みたいなそこそこの役で映画に出続けるけど、超大物ダリル・F・ザナックとの愛人関係が終わると人気がなくなり、B級映画の人になった。
ということで、ダリル・F・ザナックのような超大物の愛人だけでなく、結婚自体も4回しているうえに、他に不倫もしているようだし、会社は彼女を「ピン・ガール」(音を鳴らす女 - 観衆が思わず喉を鳴らしてしまうほどセクシーな女の意味)として売り出して、ずっと「巨乳が売り物のセクシーガール」という扱いだったみたいだし、最後は薬物中毒で死亡した。享年29歳。
たったの29年間で、人生が濃い。私の人生なんて彼女からすれば、寝てるのと一緒だね。
特撮については、リメイク版のレイ・ハリーハウゼンのストップ・モーションアニメに対して、こちらは「ふつうに特撮」「ふつうに合成」という感じ。
出てくる巨大生物も、リメイク版の恐竜に対して、こちらは「トカゲ」「トカゲ」「トカゲ」という具合にトカゲのオンパレード。実写の巨大なトカゲが沢山出てきて、沢山闘う。
でも決して安っぽい感じではなく、トカゲは本物を使っていて、自然で違和感がない。人間とも戦い、トカゲ同士でも闘って、かなり迫力満点。
トカゲ一択の実写合成のなめらかさを取るか、人形ストップモーション・アニメーションの技術を取るか、というところ。